距離 ページ9
俺はたまらなくなって彼女が電話を終えたのち、残ったハーブティーを煽って席を立った。
眠くなったから話はまた明日でいい?と適当にそう伝えて、彼女が頷いたのを見て踵を返した。
縁側を歩くたびにたつ、ひたりひたりという自分の足音が誰かにつけられているみたいで気持ち悪く感じた。
ざまぁみろ、赤葦の忠告を聞かないからこんなことになるんだと、自分の中にいる何かが俺を責め立てる。
木兎の寝言を聞きながら、俺は赤葦の隣にしかれた布団の上に横たわる。
赤葦「…黒尾さん、知ったんですね」
俺に背を向けるようにして寝ている赤葦から声がかかった。
かろうじて闇に紛れるくらいの小声で考えに集中していたら聞こえなかっただろう。
黒尾「あぁ。
赤葦、忠告くれてたのに…な」
未だ顔を向けずに、月明かりで青白く照らされた障子の方を向きながら答えた。
流石に情けない顔をしていそうで…それを後輩に見られたくはないし、後輩も見たくないだろうそんな顔。
赤葦「この状況で、こんなことを言うのはおかしいですし、俺からいうのも筋違いかもしれない」
すぅ、と息を吸う音が聞こえてきて、赤葦は静かに、ゆっくりと言葉を選びながらそう言った。
赤葦「Aと、距離をおかないであげることはできますか」
…この気持ちを、知らない第三勢力になぎ払われて、苦しい時になんでそんなことを言われなきゃならないのか。
突然意味もわからずに頭に血がかっと昇った。
赤葦から話は少し聞いた、それに皐月さんのあの過保護さからして、Aの言動と行動からして、何かしらあったのは明白だ。
もちろん、Aの傷をえぐるようなことは友人としてもやりたくはない、でも。
黒尾「そもそも元から距離自体は近くないわけだし…
学校が始まれば、また」
気持ちの整理をつけるのに少し距離をおきたい気持ちと、友人として、好きだった人として近くにいたい気持ちとが鬩ぎ合う。
ギリギリと、どちらからも首を締められて、息苦しい。
赤葦「無理にとは言いません。
でも、Aがあんなに楽しそうにしてるの…そうそうないって、皐月さんが笑ってそう言ってたんです。」
声が少し震える後輩の方を向くと、彼の表情は切なさそうに眉が潜められていた。
その表情を見た俺は、キッパリと断るような答えがもう口から出てきようもなかった。
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あやにゃん(プロフ) - hatajimamomokaさん» momokaさん、コメントありがとうございます♪ 若干話が迷走してはおりますが、最後までお付き合い願えたら光栄です( *´艸`) (2020年3月7日 19時) (レス) id: 64c80b7f49 (このIDを非表示/違反報告)
hatajimamomoka(プロフ) - このお話めっちゃ好きです!更新頑張ってください! (2020年3月7日 16時) (レス) id: 366eb10de3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2019年11月23日 22時