自由 ページ4
薄手の長袖のシャツにスラックスを履く。
洗ったばかりの髪の毛を乾かしてワックスでスタイリングし直した。
…これでも準優勝の傷を負ってるんだけどなぁ…
それも考えられないほどに何かが強引に動いている。
篠原本家に着いたのは２１時を過ぎてから。
岩ちゃんも花園もすでに揃っていて、俺が着いてから数分遅れてまっつん、マッキーに彼の従兄弟の浅野ちゃんもやってきた。
バレー部のいつメンほとんど勢揃いじゃんとか心の中で現実逃避をする。
そうじゃ無いと着いていけなさそうだ。
篠原爺「よく来てくれた。
遅れてすまないね」
俺達が席について１０分弱。
大きなドアから現れたのはこの屋敷の当主で、Aのお爺さん。
この篠原の家を大きくしたのも彼の力だと、言い切っても過言では無い手腕。
組織を統率するカリスマ性に、落ち着いて隙のない身のこなし、圧倒的な存在感。
バレーで強敵を前にした時のように少し動きが鈍る感覚がする。
ひょこりと彼の後ろから顔を出したAはワンピースを纏っていて、空いている胸元には俺が贈ったリングが輝いていた。
身長は女子にしては低くは無いはずなのに、彼女のおじいさんの後ろに立っているせいか少し弱々しく見える。
要約すればつまりはこう言うことだ。
俺達が知らぬ間に、(風邪で欠席となっている間に)彼女が誘拐されていたため、セキュリティ的問題で元々住んでいた家を引き払いこの仙台の本家か、彼女のお母さんの家、赤葦家で過ごすことが決まったこと。
送り迎えは当然車で、部活は続けられるかは未定ということ。
彼女から自由が奪われて行くような光景だ。それを俺は眺めていることしかできない…？
及川「…ちょっと、待ってくださいよ。
Aはそれで…いいの？」
篠原爺「いいかよくないかはこの際関係ない。
そのうちこの家を継ぐ彼女が狙われた。理由はそれだけで十分じゃないか？」
…彼女が口を開く前に遮るようにそう言った声は強い。
誰も反論しようと口を開かない。
”無力”という単語が何度か頭の中でこだました。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年4月16日 0時
