【HQ】及川さんは一途らしい３ (ページ26)

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遅寝早起きページ26

『あったかくなって眠くなってきたな…
クロくんも明日も１日疲れるだろうし、早く寝なよ』

ペシャンコの髪の毛から覗く少し悪い目つきの彼は立ち上がった私を見上げる。
飲み終わったであろう彼の缶を手から奪い、近くの缶ゴミに入れた。

黒尾「３年だからって言いにくいこともあるだろうけど…
なんかあったら俺でもいいし、赤葦かに言った方がいいと思うよ。」

少しあんずるような物言いに笑いが漏れてしまう。
心配してくれているのに少し変かもしれないけど…

『そんなに気にしないで。
少し寝付けなかっただけだから。おやすみ、クロくん。』

ひらりと振られた手を見て階段を上る。
きしむ床の音をできるだけ立てないようにゆっくりと歩いた。
　
　
ーーーーーー

ぱちりと目が覚めてしまったのが朝５時半。
まだ薄暗い中周りはまだ静かな寝息を立てている。

Tシャツとナイロン生地の短パンを履いて髪をシュシュでひとまとめにした。
しょぼしょぼとする目を開けて別棟の洗面所に向かう。

チュン、チュンとどこかしらから鳥の鳴き声が聞こえてきて落ち着く。
皐月さんもこんな音で起こしてくれたらいいというのに…

『あ…菅原さんおはようございます。』

起きていても先生方くらいかと思いきや、先客がいた。
濡れた顔をタオルに埋めてくるりと振り返った彼は優しい笑みを浮かべた。

菅原「あ、篠原、さん…だったべ？
おはよう。
同級なんだし、敬語使わなくていいよ。」

一回自己紹介しただけにも関わらず名前を覚えていてくれた彼はさらりとそう言った。
自分的にもそうしたかったのだが、敬語は私から始めてしまったことなので言いにくかったのだ。ありがとう、菅原さん…

『うん。
なら、私もさん付けられるとどうもむずかゆくて…
スガくんって呼んでもいい？』

菅原「もちろん。
なんか及川の彼女って影山から聞いてたからどんな人かなって思ってたけど、話しやすくてなんか安心した。」

簡単に身を整えて彼と食堂に向かった。

スガくんは暇な時間は持ってきた問題集やらを解いているらしい。
私はカリカリと、静かな部屋に響くペンの音を聞きながら英語の課題の本を読む。

時折辞書を引いて意味を調べて、彼の問題集の変な問題文を共有して笑ったり過ごしていれば合宿参加者たちが始動する時間になって来たのかあたりはざわつき始めた。
　
　