【HQ】及川さんは一途らしい３ (ページ47)

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帰宅ページ47

ー皐月祐利視点ー

クロくんとAさんに呼ばれる音駒の生徒。
あの目は、そう言うことなんだろうなぁなんて思いながら連絡先を交換する二人を見る。

少し早口気味なAさんに気づき、冷たい飲み物を車までの道の脇にある自動販売機で買ってクーラーを効かせてある車内に彼女を案内する。
体育館から離れてすぐに笑顔が消えた彼女。どうせまた我慢しているのだろう。

皐月「少し、横になられますか？
それとも車を走らせても大丈夫そうでしょうか？」

『あんまり揺れなさそうなら、大丈夫です』

無気力にそう言う彼女はフードをかぶって目を閉じた。
車のサイドウィンドウからの日光を遮断するためにスクリーンを上げて、彼女にタオルケットを渡す。

皐月「前に薬を飲んだのが３０分強前ですから、家に着いたらもう一度薬出せるか赤葦京一様に確認しておきます。」

はい、と小さな声を聞いたのちに、後部座席との間のスクリーンを上げて、前からの光が入らないようにした。
疲れた中でこれだけ酷そうな頭痛に襲われれば心細いかもしれないが、光で悪化するよりはいいだろう…

ーーーーーー

疲れて眠ってしまったAさんを、医者が待っている家の中へと抱き抱えて連れて行く。ゆっくりと、揺らさぬように。
ただでさえいっぱいいっぱいの彼女をこれ以上…

鎮痛薬、睡眠薬、食塩水にビタミンと何から何まで腕に刺さる針から注入されて行く。
楽そうではあるが、死んだように眠る彼女に俺は少し怖くなった。睡眠薬を入れられているのだから、当然と言えばそうなのだけれど。
もう少し気をつけてあげられなかっただろうか…と…

仙台からわざわざ新幹線でやってきて、朝一には帰ると言う赤葦京一様は静かに襖を開けて、こちらに歩いてくる。
ゆっくりと頭を下げれば、かしこまらないでと言われる。

赤葦「皐月さん、そろそろ休んだらどうです？
Aを迎えに行って帰ってから一睡もしていないんですよね。」

医者としてそれは見過ごせませんよ、そう言う彼は自身の目の下をポンポンと指差して俺を少し凄んだ。
主人の前にそんな顔で出るな、と言っているようだ。
確かにAさんに見せる顔ではない…もう少しマシな顔をしなければ。

俺は彼にもう一度お辞儀をして、Aさんの顔を見てもう少し奥にある部屋で仮眠をとることにした。

次、俺が起きる頃にはAさんが目を覚ますことを祈って。