不眠 ページ38
ゆっくりと伺う様な表情で皐月さんはこっちへやってくる。
部屋に入ってくることはもう慣れている通り越して当たり前の様な気がしていて、抵抗すら感じない。
ベットの端に座りなおして、未だなお涙が止まらない私の足元に膝をついた彼は左ほほを溢れる涙を拭った。
彼のハンカチからは家の柔軟剤の香りがする。
優しい、お母さんといっしょの匂い…
皐月「…Aさん」
様呼びはなれなかったので妥協して”さん”にしてもらった私の名前を呼ぶ。
この一週間過ごしてきていた私は流石に疲れていてきた。
『皐月さん、私ね。
疲れた』
簡潔にそう伝えれば彼は表情を歪める。
皐月「明日は学校休みましょう。
一日、ゆっくり過ごしてください」
誰かに短くメールを書いた彼はふと笑った。
安心させる様な笑みに決壊して、大粒の涙が頬を伝った。
まだ知り合って1ヶ月も立っていないはずなのに、皐月さんは今の私を支える大きな存在となっていた。
ーーーーーー
眠れない私を間接照明のみで明るくしたリビングへとつれる。
ソファーに座らせ、柔らかい毛布を膝にかけ、彼はキッチンの方へと歩く。
誰も見えなくなった広いリビングの外は真っ暗で、ガラス越しの庭はもう視認できない。
カチコチといつもは気にならない時計の音がやけにうるさく感じる。
神経過敏なのだろうか…もう少し肩の力を抜こうとすればするほど、どうすればいいのかわからなくなっていた。
上の空だった私の前にガラスのティーポットが置かれた。
薄い青の中身は神秘的で、私の心を少し浄化させる様だ。
ティーカップ、そして切られたレモンがお皿に乗っている。
これはレモン汁で青からピンクに変色するお茶だろうか
皐月「バタフライピーと呼ばれるハーブティーです。
変色するのは、知っていますよね？」
鮮やかな青がガラスのティーカップに注がれる。
湯気が登るそれを眺めて、レモン汁を一滴垂らすとそこから綺麗なピンクに変わる。
続けて数滴落とすと、全体が染まった。
香りを楽しんでから口をつける。
ローズマリーの香りがするそれは暖かくて安心させる。
２杯目を飲んでいるとゆっくりとまぶたが下がっていった。
皐月「…ゆっくりお休みください、Aさん」
微笑む皐月さんを最後に私はソファーで寝入ってしまった。
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あやにゃん(プロフ) - 紅葉さん» 一章と二章、どちらにもコメントくださって嬉しいです！(皐月さんは私の好みモロ出しにしてみました笑) そうですね、今作品のテーマは世界観や視点が変えられること、そして変えざるを得ないことでして…(でもやっぱり表現が少し大袈裟なので文章力が欲しいものです笑) (2020年6月2日 16時) (
レス) id: 41b9de9ad7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - が、頑張れ篠原ちゃん……(その一言に尽きる)。皐月さんが好きです笑！世界観がどんどん広がっていくのがわかって楽しいです。 (2020年6月2日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2018年8月19日 8時
