お昼ご飯 ページ7
昼休み。
ひなは知らぬ間に何処かへ行ってしまっていて、他バレー部員は友達と食べに行っているようで、私は保健室の京一兄さんのもとを訪ねた。
『お久しぶり、京一兄さん。
あの時以来かな』
引き戸を開けて、顔を出せばいつもと変わらぬ様子で迎え入れてくれた。
赤葦「どうしたの?
一応ここ飲食禁止なんだけど」
私の手にあるお弁当を見つけて、苦笑いをした。
彼は革の鞄から濃紺の風呂敷に包まれたお弁当箱を取り出す。
赤葦「中庭にでも行こうか。
表には生徒多いしね」
彼は少し保健室の窓から見える校門の方を見た。
誰かは認識できないが、人影が見える。
少し目が悪くなっただろうか。
メガネも考えないといけないな、と隣を歩く京一兄さんのメガネフレームを見上げた。
ーーーーーー
赤葦「おばさんの料理、いつ見ても美味しそう。
それにAは本当に白米が好きだね。」
いわゆる”お弁当”の中身。
唐揚げやだし巻き卵。
それらに添えられた温野菜と敷き詰められた白ごはん。
『うん。
でもそういえば京治くんもじゃない?昔っからおにぎりばっかり食べてるでしょ。』
美味しそうにおにぎりを頬張る京治くん、京一兄さんの弟を思い出す。
『京治くんは元気?
東京の梟谷に入ったって聞いたけど』
相変わらず京一兄さんも美味しそうな煮物やらが入ったお弁当を食べている。
一人暮らしのはずなのにちゃんと自炊してるなぁ…
赤葦「元気らしいよ。
木兎さんってバレーの先輩がすごいってよく言ってる。」
木兎さんと言えばバレーのスパイカーでも五本の指に入るという凄腕。
隣の彼はふっと廊下の方を見て微笑んだ。
赤葦「ごめん、ちょっと急用を思い出した。」
そういって彼はすくりと立ち上がる。
二、三回頭を撫でて、彼は渡り廊下の方へと足を進めた。
1人になった私は食べ終わったお弁当箱を直して巾着に戻した。
赤い巾着は小学6年生の時に徹が家庭科で作ってくれたもの。
6年生にの家庭科にしては大変出来が良く、家庭科の女の先生に徹が褒めちぎられていたことを思い出す。
あの人は徹にベタベタして気に食わなかった、なんてまたネガティブ思考に走りそうになった。
いけない。
立ち上がってスカートを少しはたく。
教室に戻って次の授業の予習でもしよう、そう思い私はさっき京一兄さんが歩いた方へと足を運んだ。
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あやにゃん(プロフ) - 紅葉さん» 一章と二章、どちらにもコメントくださって嬉しいです!(皐月さんは私の好みモロ出しにしてみました笑) そうですね、今作品のテーマは世界観や視点が変えられること、そして変えざるを得ないことでして…(でもやっぱり表現が少し大袈裟なので文章力が欲しいものです笑) (2020年6月2日 16時) (レス) id: 41b9de9ad7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - が、頑張れ篠原ちゃん……(その一言に尽きる)。皐月さんが好きです笑!世界観がどんどん広がっていくのがわかって楽しいです。 (2020年6月2日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやにゃん | 作成日時:2018年8月19日 8時