微熱 ページ33
ー自分視点ー
まわらない呂律に異常を感じる。
体は外の日差しを熱いと感じても、指の先はとにかく冷たかった。
徹の手に包み込まれて少しは和らぐも、芯から冷えているのかやはり痛い。
『…保健室？』
廊下に見覚えはある。
庭から渡り廊下を通ってまっすぐ進む。
以前京一兄さんに抱えられたのもこの辺だな…と思い出した。
権力やらでおそらく捻り潰されたいじめ主犯その他数名はどこに行ったのか。
徹に若干はぐらかされて指輪を渡されたあの日を思い出す。
ここらでは大きめな家の持ち主で、発言力が多少ある彼女の家は最近音沙汰がない。
どっかに飛ばされたのかな…
どこへ飛ばされたとしてもその地域の人がかわいそうだ。
及川「ちゃんと前向きなよ…転ぶよ？」
窓の外を見ていた私に徹が顔を覗き込んで言った。
いきなりのことに一歩後ずさる。
『ひぇ』
謎の声が漏れた。
小さなため息を吐いた徹は私の手を引っ張ってまた進む。
引き戸に手をかけて開ければキャスター付きの椅子に座った京一兄さんがこちらを向いた。
赤葦「また来たの？」
呆れたような表情の彼はゆっくりと立ち上がってベットに座るように言って棚に何やらを取りに行った。
及川「疲れが出たようで」
私の背中を撫でる徹はパーテーションから見え隠れする兄さんに話しかける。
顔に熱が集まっているのかくらっとする。
そんなに高熱ではないと思うのだが如何せんそもそも体が強くないので辛さを感じる。
耳に何かが触れて顔の筋肉がこわばった。
ぴっと音がして離れたものを見ると何かの機械を手に持った京一兄さん。
『体温計？
新しくしたんだ』
普通の脇に挟むタイプの体温計を置いていたのだが、新しく買い換えたらしい。
1秒で体温を測れるとテレビのコマーシャルで何度か聞いた謳い文句が脳内で再生された。
少し癖になるリズムのそれは頭を離れようとしない。
思い出すんじゃなかった。
表示を見る京一兄さんの表情はそこまで変わらなかった。
予想していたのかそれともそこまで変わらないのか。
赤葦「そこまで高いものではなかったからね。
衛生的にもこっちの方がいいし。
それは置いといてとりあえず寝ようか。
まだ微熱の範囲だけど無理はいけないからね」
かけられた布団の上から徹がポンと撫でた。
安心させるような笑みを浮かべる。
及川「放課後迎えに来るからね」
予鈴がなり、彼は急いで部屋を出て行った。
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あやにゃん(プロフ) - 紅葉さん» 一章と二章、どちらにもコメントくださって嬉しいです！(皐月さんは私の好みモロ出しにしてみました笑) そうですね、今作品のテーマは世界観や視点が変えられること、そして変えざるを得ないことでして…(でもやっぱり表現が少し大袈裟なので文章力が欲しいものです笑) (2020年6月2日 16時) (
レス) id: 41b9de9ad7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - が、頑張れ篠原ちゃん……(その一言に尽きる)。皐月さんが好きです笑！世界観がどんどん広がっていくのがわかって楽しいです。 (2020年6月2日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2018年8月19日 8時
