二通目 ページ3
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手紙の最後、自分の名前を書こうとしたとき、ふと手を止めた。
及川先輩は、私の名前を知らない。
及川先輩は、私の顔を知らない。
及川先輩は……
多分。ううん、絶対。
私のこと、なんにも知らない。
あーあ。
私は及川先輩のこと、ほとんど知らないけど。
そんな私以上に及川先輩は……私のことを知らないんだ。
自分で考え始めたことなのに、現実をつきつけられて泣きそうになって。
その考えを頭の中から消したくて。
わざとらしく自分の座っていたいすを大きな音を立たせて立ち上がる。
机に置かれた手紙に、自分の名前は、ない。
どうせ知られていないのなら。
どうせ叶わないのなら。
名前を書かずに、及川先輩に想いを伝えます。
「……及川、先輩。
好き、です」
丁寧にたたんで封筒に入れた手紙を、自分の想いを、ゆっくりと手で包み込んで。
本当は及川先輩に伝えたかったコトバを、ぽつりと呟く。
……私の存在は知られなくていいから。
少しでもこの想いが届きますように。
そう何度も何度も願いながら。
ゆっくり、教室を立ち去る。
しばらく歩いて立ち止まった私の目の前には、大好きな先輩の机があった。
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46ねこ(プロフ) - 続編、出来ました。よろしくお願いします。 (2015年10月5日 22時) (携帯から) (レス) id: 50f32b6bab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すず乃&46ねこ | 作成日時:2015年9月7日 17時