ド派手な継子 壱

参拾参話 臆病者 ページ34

「この女は俺が喰う!!」

「何言ってんだ…俺が先に見つけたんだ！」





目の前で二匹の鬼がどちらが私をたべるかで争っている。


――――あぁ、醜い。



臭いし、汚いし、煩い。






「気持ち悪いから喋らないでくれる？」





唄の呼吸 参ノ型“森閑の切り裂き ”




血飛沫が上がる様子をじっと見る。


自分が力をつけたことを再確認する。





「女だ……！」

「俺に…俺に喰わせろ！！」

「はぁ、次から次へと……」




飛びかかってくる鬼を一瞥する。



「型を使うまでもない。」



頸を飛ばして欠伸をする。

たっく……どんだけ生け捕りにしてんの………

ここで空腹に苦しむのは可哀想だか致し方なし。人間を食べていい理由にはならない。





「まぁ、私達人間も空腹を満たす為に命を狩っている同類だけど。」


自己防衛の為だ。そう言い聞かせて暗い山の中を進む。



すると汚い高音が辺りに響く。





「……あっちか。」


鬼と人の気配がする方へ向かえばそこには金髪の男の子が五匹の鬼に囲まれていた。

………別に助けるわけではない。鬼がいるから狩るだけ。


「唄の呼吸 壱ノ型“静寂の余波”」



一気に五匹の鬼を仕留める。

弱い。こんなものに太刀打ちできないなんて金髪の彼は鬼殺隊に入ったとしても即殉職だ。

お面の隙間から横目で尻もちをついている彼を見る。


「あっ、俺……」

「…………」




無駄な時間だと思いその場から去ろうとすれば彼は焦ったように私を引き止める。


「待って！…えっと、俺と………“結婚してください！”」

「は？」


いきなりの求婚。

今まで己の美貌で数多くの人間を石のように固めてきたAだが、今度は自分が固まってしまった。

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