冷徹の中の灯火/H ページ10
『こんな餓鬼拾ってどうするつもりだよ!』
『じゃあ放るか？』
『そうじゃなくてだな…』
泥だらけで見ず知らずの少女を抱えた智が振り向かずに言った。
後ろを歩くおれはその腕の中で泣き腫らした目で眠っている幼い顔を見て溜息をつく…
戦場の岩陰で泣きもせずただ震えて、刀のない鞘を抱え
空っぽの瞳でおれたちを見ていた少女
それが鈴音だ……
智が近づくと弾かれるように立ち上がり
見よう見まねで鞘を構えた。
『お前、捨て子か？』
『……』
『大したもんだな。自分の身を自分で守ってきたのか』
鈴音は親を知らない。
言葉は戦場で覚え、食物は屍から握り飯を剥ぎ取った。
鞘一本でこの戦場を生き抜いてきたのは奇跡だ。
『俺と来い』
『おい智!』
『その腕、俺が買ってやる。だが条件がある。
お前に居場所をやる代わりに、お前はその刀で守れるもんを探せ』
『……まもれる、もの？』
『あぁそうだ。その真っ直ぐな刀で自分だけ守るなんてカッコわりぃだろ？』
本人はもちろん知らないだろうが
このとき鈴音は智の心に光をもたらしたんだ。
あの人を失って
仲間を失って
自分の手から零れおちていく命に絶望していた智に
背負うことを怖がっていた智に
再び仲間を得て、背負い、歩き出す勇気を与えたんだ……
『…こいつは絶対に死なせない』
『智？』
住処である寺の一室に敷かれた布団に鈴音を寝かせながら
おれたちを見ていた鈴音の瞳のように空っぽだった智の目に光が宿るのをおれは見たんだ。
『こいつは本当の孤独を知ってる。その苦しみと虚しさを知ってる。
泣き方も、涙さえ知らなかったのに…この世はこの子にどん底の世界を突き付けた』
『絶対に守ってみせる……
こいつに光を見せてやるんだ』
あの人を失ってから、初めて見たんだ
智の涙を……
あの日からお前は修羅となった
鈴音を守るため、この世を変えるため
あの人の仇を取るために
なぁ…
あんたは覚えてるか？
おれとの約束……
覚えてんなら、来てくれるよな？
悔しいけど
智が最後に頼りにすんのは
いつもあんただった
だからさ
おれとの約束
早く果たしに来い……
・
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紗月(プロフ) - 成魔さん♪さん» 嬉しいです！(/ω＼)期待にお応えできるよう頑張ります！現実のほうも一緒に頑張りましょ!(笑) (2015年2月19日 15時) (
レス) id: 3daef8858a (このIDを非表示/違反報告)
成魔さん♪ - 紗月さん» もちろんです!やっぱり久しぶりに読んでも、面白くて…。続きが気になってしかたないです!お互い、頑張りましょう! (2015年2月5日 21時) (レス) id: 9f8c4a316c (このIDを非表示/違反報告)
紗月(プロフ) - 成魔さん♪さん» お久しぶりです!(^^)!私もスランプになってしまい全然更新できてなかったんです。すみません。やっと抜け出せそうなので地道に更新していこうと思います！成魔さんも頑張ってください！！ (2015年2月5日 21時) (レス) id: 7052429c8b (このIDを非表示/違反報告)
紗月(プロフ) - へさささん» 有難うございます！更新が遅れてしまい申し訳ありません。 (2015年2月5日 21時) (レス) id: 7052429c8b (このIDを非表示/違反報告)
成魔さん♪ - 紗月さん» お久しぶりです。まったくこれなくてすみません…。自分の小説の更新で忙しすぎて…という言い訳です…すみません…。またちょくちょくここに来ますので、更新、頑張ってください! (2015年2月4日 22時) (レス) id: 9f8c4a316c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紗月 | 作成日時：2014年6月28日 22時
