傭兵として…隊士として２/A ページ33
本当は今話し合うべきは和だろう。
でも俺はこの人と話したかった。
いつも物事を離れたところから見て、感情を表に出さないこの男と……
「兄貴…それは本心っスか？」
俺が知りたかった内側に触れたのは
今にも泣き出しそうな鈴音ちゃんだった。
「兄貴はいつも正しかった。兄貴はいつもおいらたちの幸せを考えてくれた。
でも兄貴はいつも……自分をおざなりにする」
「鈴……？」
「自分の幸せを考えないで、自分のやりたいことを我慢して
いつもいつも……本心を隠すでしょ？」
白い頬に流れた涙に目を見開いた智さんは曖昧に首を振る。
そして初めて聞く頼りない声で言った。
「俺…は、お前たちが生きててくれれば……それだけで幸せなんだ。
それに……この野良をつくったのだって」
「智ｯ」
春彦さんが智さんの言葉を遮り首を振る。
しまった。と口を押さえた智さんに、鈴音ちゃんは傷ついたように笑った。
「ほら…そうやっておいらに隠す。それが兄貴は、おいらの幸せだって言うっスか？
おいらのために隠してるのは分かってるっス……でも…でもｯ
何も知らなくて、何も出来ない自分が苛立だしくてｯ自分の無力さを突きつけられる！
こんなのが幸せだって言うの!?」
ぼろぼろと涙を流し叫び訴える鈴音ちゃんに
智さんも春彦さんも目を見張り言葉を失った。
彼女はしゃくり上げながらも今までの不安や想いを伝え続ける。
「兄貴…おいらはね？兄貴が笑ってて、春彦が笑ってる……
それが幸せなんだ…
おいらが悪戯して、春彦に怒られて…兄貴にｯ
兄貴に……頭、撫でてほしいんだ」
「……」
「それで…それでね。そこに和也たちがいたら、もっと幸せなのっ…
いっぱい笑顔、増えるから。それに……」
「…それに？」
智さんが優しくその先を促す。
顔を上げた鈴音ちゃんは智さんの頬に手を添えて
綺麗な顔で微笑んだ。
「兄貴が…嬉しそうだから」
片目の視力を失い震えていた小さな女の子は
もうどこにもいない。
その光景を見ていた誰もがそう思った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紗月(プロフ) - 成魔さん♪さん» 嬉しいです！(/ω＼)期待にお応えできるよう頑張ります！現実のほうも一緒に頑張りましょ!(笑) (2015年2月19日 15時) (
レス) id: 3daef8858a (このIDを非表示/違反報告)
成魔さん♪ - 紗月さん» もちろんです!やっぱり久しぶりに読んでも、面白くて…。続きが気になってしかたないです!お互い、頑張りましょう! (2015年2月5日 21時) (レス) id: 9f8c4a316c (このIDを非表示/違反報告)
紗月(プロフ) - 成魔さん♪さん» お久しぶりです!(^^)!私もスランプになってしまい全然更新できてなかったんです。すみません。やっと抜け出せそうなので地道に更新していこうと思います！成魔さんも頑張ってください！！ (2015年2月5日 21時) (レス) id: 7052429c8b (このIDを非表示/違反報告)
紗月(プロフ) - へさささん» 有難うございます！更新が遅れてしまい申し訳ありません。 (2015年2月5日 21時) (レス) id: 7052429c8b (このIDを非表示/違反報告)
成魔さん♪ - 紗月さん» お久しぶりです。まったくこれなくてすみません…。自分の小説の更新で忙しすぎて…という言い訳です…すみません…。またちょくちょくここに来ますので、更新、頑張ってください! (2015年2月4日 22時) (レス) id: 9f8c4a316c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紗月 | 作成日時：2014年6月28日 22時
