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12月12日。

小雨の中傘をささずに河原を歩いていた。
雨に濡れるのが好きとかそんなのじゃない。
ただ捨て猫がいたから。
そう、あの1ヶ月を過ごす元凶になった黒猫に似ていたから。
ダンボールに傘だけ差してきたのだ。
ただそれだけ。

雨が強くなってきた気がする。
明日起きたら風邪引いてないかな。
早歩きで歩いていると、突如私の頭上に傘が立っていた。

「大丈夫?風邪引くよ」

キヨと同じくらいの歳だろうか。
人あたりの良さそうな顔をしている黒髪の男性。


「ありがとうございます。でも大丈夫です」
「いやいや、俺傘要らないからさ、使ってよ」

無理矢理傘を持たされる。
どうやらナンパなどで声をかけてきた訳では無いらしい。

「お兄さんが濡れちゃいますから…」
「いや、ほんと家すぐそこだから。気にしないで」

そう言うか否や彼は走り去っていった。

(名前…聞いておけば良かった)

**

「〜てことがあって」
「へえ。まあナンパされたわけじゃないならいいや」

その日の夜。
私は今日の出来事を電話でキヨに話していた。

「ナンパって…されないよそんなの」
「まあそいつはともかく気をつけろよ。ところでさ、今日って12日だよな」
「え?うん」
「で、黒猫を見つけたと」

12日。黒猫。
キヨは何を言いたいのだろうと私は頭を回転させた。

「…あ」

そうだ。今日はー。

「分かったか?」
「うん。私たちが解放された日…」
「なんか運命的だよな」
「さすがに偶然だと思うけど」
「まあそうだよなー。あとスイーツバイキング来週だからな。ちゃんと来いよ」
「私約束事破った記憶はないけど」
「朝迎えに行くから。じゃあ課題終わってないから切るわ」

(人の話を聞かずに自分の言いたい事だけ言って切られた…)

課題が終わってないなら仕方がない。
というか、電話かけてきたのはキヨの方からなのだけど。

(また明日河原に行ってみよう)

偶然だとは思う。
あの猫の様子を見に行くだけ。
死んでたりしてたら罪悪感を抱えずにはいられないから。
そう、ただそれだけなのだ。

もう、面倒事には関わりたくない。

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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