気づいたら赤ちゃんから人生やり直してるんだけど【排球】

第18話 ページ19

玄関で靴を脱ぐ。家の中に入ると、台所からは物音がした。いい匂いもするし、母さんはいるみたいだ。今日は肉じゃがか？

廊下を進み、左手にある引き戸をスライドさせると


「あ、」
『し〜〜っ』


夏が気持ちよさそうに眠っている光景が広がっていた。その隣で、Aが夏にタオルをかけている

思わず声をかけたら、Aは人差し指を口元に持って行き、悪戯する時みたいな、ちょっと楽しそうな顔で俺に静かにしろと伝えてきた


無言で頷き、なるべく音を立てないように2人に近づく


『おかえり。練習はどうだった？』
「ん、ただいま。楽しかったよ」
『そっか』
「うん」



小さなお姫様が起きないように、俺らは細心の注意を払う


すると、なんだかむず痒いっつーか、気になる視線を感じた

Aからだ。 少しの間耐えてみたが、どうしても気になったので話しかけることにした


「…なに？」
『え？』
「その、見られるの気になるから」
『うん。ごめん。気にしないで？』



そう言われたら余計に気になる。負けじと俺もAをじーっと見つめてみると、窓に切り取られた外の様子も一緒に見えた。暗くなりかけの空と、夕焼けの色が重なっていて


「……綺麗だな」
『…ん？、！？』
「空」
『あ、あぁ空ね(ビックリした…)』


そういえば前に、Aに俺の髪が綺麗だと言われたことがある。クラスのやつに変な髪、ってちょっとからかわれていた時だったから、その言葉がすごく嬉しかったのをよく覚えている


暗くなりかけの空。その不思議な色は、濡れた烏の羽みたいだ。そしてそれは、



「Aの目と髪って、真っ黒でさ、烏に似てるな」



俺が小さい時から好きな色だ


『からす？』
「うん。俺、すげー好き」
『、ありがとう…！』


なんでか分からないけど、Aの顔が赤い気がする。熱でもあるのか？

『っ、え、なに』
「顔赤いから、大丈夫か？」
『だ、いじょうぶ！(だから離れてくれ…！)』

額をくっつけてみると、熱かった。ていうか余計に赤くなってるような…


『ほんと大丈夫、だから！！』


それならいいけど。でも無理はしてほしくない


「辛かったら俺に言えよ。歳下だけど、お前のことは誰より分かってるから」


俺のその言葉に、Aは林檎みたいに赤くなっていた






それからしばらくの間、母さんにずっとニヨニヨされたんだけど、何だったんだろう？


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日向は誉め殺しスキル持ってると思ってる。

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