かくれんぼ

切り抜ける ページ21

〜萩花side〜




『夏恋！』








こんな風に大声で叫んだって誰も来ない


返答もない


これがわざとなのか、それとも本当に誰も気付いてないのかって言ったらそこは分からないけど


ただ、あと10分で今日のゲームは終わるの




夏恋は誰かに触れた？


もしも触れてないなんてことになったら…






あぁ。やだやだ。私が生きて妹が死ぬなんて


姉としてのプライドが許さないし、私は迷わず夏恋が生きることを願う




だから、あと10分…いや、遅くても5分のうちに夏恋を見つけないと









『夏恋ー！』








屋上にいるべき？


それとも、自分から動いて見つけるべき？


でも、下手に動いてすれ違いなんてことになったらそっちの方がずっとめんどくさい



だから、向こうがこっちの声に気づくまで待つことを決めた









『あと8分…』









ずっと大声で呼んでるのに気付いてないの？


ほら、叫び続けてるうちにもう2分も無駄にした




やっぱり自分から走り回って見つけに行った方が早いな


そう思って、ドアに体を向けたその瞬間









「大声で妹の名前呼ぶなんて。わざわざ自分はここですよー。って教えてくれたんですか？萩花さん。」


『あ…』


「妹さん、来なかったんですか？」


『来て…ない』









この人は危ない。


体が、脳がそう察知した




思わず後ずさりして


いつでも逃げられる体制を作った


もちろん、逃げれるって言っても屋上だけの範囲だけど





でも、分からない


相手は男性




私の方が足の速さだって体格だって体力だって


なにもかも負けてる



私がこの最悪な状況を切り抜けるには、頭脳戦で勝つしかない



あと8分。いや、長くても5分で終わらせる



それで、夏恋に会いに行く









「あれ。もしかして、考えてます？この状況からどう逃げるか」


『…考えてないって言ったら嘘になる』


「ですよね。俺もめっちゃ考えてますもん。どうやって萩花さんを捕まえようかなって。」


『ねぇ。私の負けって認めるから、こういうのやめない？……壱馬』


壱馬:「じゃあ、萩花さんからこっちに近づいてきて下さい。そうしないと証明されませんからね。」


『……分かった』









夏恋に会うために



私はこの場を切り抜ける。





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