第61話 ページ14
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『ん……』
目を開けると映ったのは自分の屋敷の天井で、
外はもう日が昇って十分に明るくなっている。
緩慢な動作で布団からむくりと起き上がり、ふぁ、と欠伸をつく。
『…………』
昨日、あの後どうやって自宅まで戻って眠りについたのかよく覚えていない。
全てが夢ならよかった。
だけど、泣いた後の瞼の腫れぼったい感じが夢ではないことを物語っていた。
『最低だ、私』
私は人間が嫌いだ。
人間という生き物は自分勝手で、簡単に他の人を傷つける。
愚かだと、思っていた。
それなのに私は……私が不死川にしたことは…。
そんな愚かな人間達と、同じことをしてしまった。
『今日は何か予定ある?』
打ちひしがれる私の様子を心配そうに見ていた鴉に声を掛ける。
「今日ハ任務、因ミニ明日ハ柱合会議ガアル」
『…了解』
そして柱合会議の2日後が、不死川と会う約束をしていた日。
…よし。
その日、全部、言おう。
昨日あんな別れ方をしちゃったから、その日に不死川が来てくれるか少し自信ないけど…
来てくれたなら、私の全てを打ち明けて謝ろう。
霧柱であることも、全て。
沢山心配をかけた女がまさか大嫌いな霧柱だったなんて、今度こそ激怒されてしまうかもしれない。
それでも、これ以上嘘はつきたくなかった。
始まりは私の方から近づいて、
今まで散々に迷惑をかけてしまった。
これ以上は、だめだろう。
柱の中でも一、二の実力を誇る風柱を、これ以上余計なことで振り回してはいけない。
理由はそれだけじゃない。
もっと、純粋に……
『……ねぇ、澪。』
「!!!」
澪。
久しく呼ぶことのなかった、私の鴉の名。
澪は名前を久々に呼ばれたことに驚きつつも、嬉しそうに擦り寄って来た。
でもこの子は知っている。
Aが自分の名を呼ぶ時は、彼女が何かに悩んでいたり、思い詰めている時だということを。
「ドウシタノ、A?」
そしてこの子は賢い。
普段は業務的な話し方をするが、こういう時は口調が柔らかくなる。
どんなに人との関わりを遠ざけても、この子だけはいつも私の仲間であり、友達だった。
膝の上に乗った澪を撫でた。
彼女は大人しく撫でられながら、私が話し出すのを待っている。
『私ね…不死川のことが好きなの』
初めて口にした自分の気持ち。
澪は静かに
「ソノ恋、叶ウト良イネ」と言ってくれた。
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れみ(プロフ) - 華花。さん» 華花。様はじめまして!コメントありがとうございます!とても嬉しいです…!続編でも頑張りますのでこれからも呼んでいただけると嬉しいです!! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - Royal×Edenさん» いつも感想ありがとうございます!続編でもまた会えるのを楽しみにしてますね! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。れみ様の書かれる言葉の一つ一つが物凄く好きです!お忙しいとは思いますが、体調にお気をつけて更新頑張ってくださいね。続編も楽しみにしております! (2021年11月2日 21時) (レス) @page49 id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - 柚葉さん» ありがとうございます!実弥たくさん出せるように頑張りますね!!また続編でお会いしましょう〜! (2021年11月2日 0時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - れみさん» れみさんこんばんはRoyal×Edenです!!夜中までお仕事お疲れ様です。最近は余り仕事の続きやらワクチン接種で感想が遅れて大変御迷惑をかけてしまいました(´д`|||)いよいよ第三章に入りますが一体ヒロインはどうなるのか気になってきます(^w^)♪ (2021年11月1日 19時) (レス) @page49 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れみ | 作成日時:2021年4月21日 19時