検索窓
今日:1 hit、昨日:29 hit、合計:80,679 hit

第55話 ページ8






『助かった。どうも』




包帯や塗り薬などを半分ほど分けてもらい、

更にお茶まで出してもらった。

意外と気が利くじゃん。





「考え事をしていたと言ったな」




向かい合わせで座りお茶を啜る冨岡が、不意に口を開いた。





『…別に、大したことじゃないって』



「実際怪我してるだろ」





うぐ、と言葉に詰まる。

その通りで何も言い返せない。





『説教するつもりなら、もう帰るよ』




こうなったら逃げる一択だ。


残っていたお茶を飲み干し立ち上がる。


傷口が痛いけど我慢だ。




縁側から出て行こうとする私を、冨岡は止めなかった。



止める言葉の代わりに、






「いつか、限界が来る」





…そんなことを言うもんだから、思わず立ち止まってしまう。





『…何が』



「全てにだ」





振り返ると目が合った。



私と同じ青い瞳だと思っていたけど、
私のものよりもっともっと深く沈むような青だった。





「女であるお前が男のように振る舞うには限度がある。いずれ体を壊し、精神は疲弊する」



『………』



「他の柱たちに気付かれるのも、時間の問題だ。一般隊士の中にも、妙に五感の利く者だっている。
その時、お前がどうなってしまうのか心配している」





冨岡の言っていることは的を得ていた。

ずっと隠し通せるとは思ってない。



心配していると言ってくれた。

嬉しかった。



自分でもたまに思う。

今なら、今の人達に囲まれてなら、
元の姿で生きられるんじゃないかと。



だけど。





『余計なお世話だ』





今度こそ、踵を返して立ち去る。



本当は、

冨岡の言葉に甘えたかった。




それに……


ふと頭に浮かんだ銀髪の彼。

その存在をかき消すように頭を振った。



私は男として生きるって決めた。

女は弱いから。

私はもっと強くならなきゃいけない。



…こんな所で立ち止まるわけにはいかないんだ。

第56話→←第54話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (345 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
962人がお気に入り
設定タグ:不死川実弥 , 風柱 , 鬼滅の刃
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

れみ(プロフ) - 華花。さん» 華花。様はじめまして!コメントありがとうございます!とても嬉しいです…!続編でも頑張りますのでこれからも呼んでいただけると嬉しいです!! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - Royal×Edenさん» いつも感想ありがとうございます!続編でもまた会えるのを楽しみにしてますね! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。れみ様の書かれる言葉の一つ一つが物凄く好きです!お忙しいとは思いますが、体調にお気をつけて更新頑張ってくださいね。続編も楽しみにしております! (2021年11月2日 21時) (レス) @page49 id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - 柚葉さん» ありがとうございます!実弥たくさん出せるように頑張りますね!!また続編でお会いしましょう〜! (2021年11月2日 0時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - れみさん» れみさんこんばんはRoyal×Edenです!!夜中までお仕事お疲れ様です。最近は余り仕事の続きやらワクチン接種で感想が遅れて大変御迷惑をかけてしまいました(´д`|||)いよいよ第三章に入りますが一体ヒロインはどうなるのか気になってきます(^w^)♪ (2021年11月1日 19時) (レス) @page49 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:れみ | 作成日時:2021年4月21日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。