【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ49)

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#47.それでもいいんじゃないかなページ49

遊佐視点

僕が手を取って自身の方へ引き寄せると、隣にいた人物はこれほどまでにない近い距離に戸惑いを見せながら、ほんのりと赤い顔をこちらへ覗かせた。

『っえ、？遊佐さ...！？』

「それでもいいんじゃないかな。」

先に彼女が口を開く前に被せるように続ける。

「Aちゃんの言うその"自分の好き"がどれくらいのものなのか僕には分からない。

けど、Aちゃんが不安になるほど悩んでるようなら聞いた身としてひとつ、僕からも言わせてほしい。」

真っ直ぐ彼女を瞳で捉え、掴んでいる手を逃がさないように強く優しく包み込む。

「Aちゃん。さっき言ってたこわいって言ってた感情ってのはさ、今Aちゃんが感じてるものを"別の感情(もの)"に変えることが出来るチャンスなんじゃないかな？」

『べ、つ...？ゆささん一体何の話して、』

「だからさ。」

きっと、この答えは誰よりも思ってるより単純だ。

僕は潤んだ瞳から今にもこぼれ落ちそうな雫を指先で払い、
頭の後ろへ手を伸ばしてから、優しく身体を包み込んだ。

「Aちゃんの言うその壊れるほど好きな気持ちが、

逆にもう抑えられないくらい好きって自分で思って溢れられるようになったら...

とてもいい方向に向くんじゃないかな？」

Aちゃんにも、僕にも。

そんな想いを込めながら、鼻をすする音と震える体を抱きしめ柔らかい髪を撫でる。

僕が思うに彼女の言う"好き"というのは、きっと誰よりも繊細で深く優しい分、すぐ壊れてしまいそうなほど脆く、儚いものなのだろう...。

普通の子だったらここまで考えなそうなことを良くも悪くも抱えてしまう彼女に愛しさと切なさを覚える。

「(言うタイミングを逃した挙句に偉そうな大口叩いちゃったけど...、

この子が自分を受け止められるようになって、横にいる僕が自分のいう"好きな声の人物"として気づいた時。

その時、僕は彼女に...)」

Aちゃんへ伝える準備や覚悟は出来てるのかな。

胸の中でいつの間にか静かに寝息を立てる彼女を今も撫でながら、静かに思う。

...だが、切なく思いながらも自分の中ではっきり決めていることがある。

それは____、

いつしかこの子が、

自分の感情を受け止めることが出来た日がきたら、

その時は僕が必ず、

「(君のそばで、君を受け止めるよ...___。)」

すやすやと安心したように眠る彼女を抱きしめながら、混じる体温に身を任せ、僕も静かに瞼を閉じた。