【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ48)

今日:19 hit、昨日:11 hit、合計:17,971 hit

#46.気になる君の胸の内(＊) ページ48

遊佐視点

「...え。声？」

『は、はい。最初は声なんて全く気にせず、ただウラタロスが好きだったんですけど...、

繰り返して話を見てたらいつの間にか、ウラタロスよりもウラタロスの声が好きになっちゃってたんです。

おかしな話ですよね苦笑』

肩を落として苦笑いをしたと思ったら、あ。勿論ウラタロスも好きですよ！？とわたわた慌てた様子で話すAちゃん。

どくんどくんと心臓の音が大きく響く中で、僕は意外と取り乱す事なく冷静だった。

「...それって、いつから気づいたの？

その声が好きだって初めて気づいた時。」

『あ...それは、分からないんです。ほんとにいつの間にか好きになってて、』

"いつの間にか"、ねえ...

「じゃあその声のこと、どうして好きになったのか気になったりは？

"もっと聞きたい"、"もっと知りたい"って思わなかったの？」

『遊佐、さん？』

僕は一体なにを言ってるのだろうか。

冷静な思考ではあるものの、口から出るのは言いたかった事とは真逆の黒くどろどろした感情ばかり。

続けて言う僕に対し、驚いた顔をして目を見開き戸惑った様子を見せるAちゃん。

違う。そんな顔させたかったわけじゃない。

もっと聞きたいことや伝えたいことが山ほどある。

なのにどうして僕は...

そう脳裏で後悔の念を唱えるが、喉元で言葉が詰まりそれ以上口から出せない。

少し沈黙に満ちた部屋の中、先に沈黙を破ったのはAちゃんだった。

『...こわいんです。今以上好きになるのが』

「...怖い？」

『変ですよね私っ

...こういう作品とかアニメを本格的に見るようになってからの話なんですけど、自分に好きなキャラが出来て、その気持ちや想いが強くなった時。

自分が、自分の気持ちが歯止めがきかなくなるんじゃないかってふと思ったその時から、思いに呑み込まれるんじゃないか。

いつかそうなってしまうんじゃないかってずっとこわいんです...

例えそれが、キャラ以上に好きになってしまった声だとしても』

そう言うとソファーに置いていた手をきゅっと握り、顔を伏せて前髪の間から瞳を不安そうに揺らしてどこか寂しそうな様子で肩を落とす。

『幸いのこと、私は会社の同僚の子みたいにアニメや声優さん？について詳しくないですし、調べたとしてもさっき言った通り、"好きな声の人"として自分の中に留めておくつもりです』

『...こんな事ばかり考える私が一番きら、」

僕はAちゃんが言い終わる前にそこへ置いていた手を取り、自身の方へと強く引き寄せた。