【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ47)

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#45.言葉いらずとも確信(＊) ページ47

遊佐視点

僕がそう聞くと少し驚いた様子で固まりつつ、うーんと考える素振りを見せた。

『そう、ですね。正直、全員好きで推しは決められないんですけど...キャラクターで好きなのはリュウタロスですかねっ！』

そう言ってふわっと笑って楽しそうに話すAちゃんにうんうんと笑顔を貼り付けて頷く。

だがそんな表の顔とは反対に、僕の腹の底からは黒くどろどろしたものがふつふつと湧き上がっていた。

良かったねえ鈴村くん〜、今度現場で会ったら

たっくさんお話しようねえ〜〜〜？？圧((

かつて共演していた顔を浮かべながらそんなことを考えていると、Aちゃんが少しどもりながらさっきとは違う様子で続けるように話した。

『あっ、でもですね？実は他にも好きなキャラ...？がいまして。

キャラクター、とはまた違うんですけど...』

そう言って少し照れたように笑うと、視線を戻したAちゃんがあ。と声を漏らした。

その声につられて同じように視線をテレビに向けた。

《言葉の裏には針千本。千の偽り万の嘘。

それでもよければ、僕に釣られてみる？》

聞き覚えのあるセリフと場面に少し目を移してから、またAちゃんへ視線を戻す。

すると...、

『っっ......、、』

白い肌をほんのり赤く染めながら、テレビの中の人物に見とれるように熱い視線を送る彼女の横顔が目に飛び込んできた。

「(.........まさか。)」

その顔に思わず喉を鳴らす。

正気を保ちつつ声をかけると、ハッと意識を取り戻してこちらに目を向けた。

「Aちゃん。」

『あっ...す、すみません遊佐さん。えっと、』

「今のキャラクターが好きなの？」

そう聞くとへっ！？と大袈裟に分かりやすい反応を見せるAちゃん。

我ながら芝居がかった聞き方だ。

今のキャラクターも何も、キャラは昔自分が声を当てていた人物でもあり、そんな言葉いらずとも今の表情で確信したというのに。

こんなところで、まさか仕事柄の演技が役立つとは。

喉まで出かかった言葉を飲み込み、はっきりとしない自分に嫌気をさしながら皮肉にそう思っていると、彼女が変わらず照れた様子で口を開いた。

『えと...ですね？好きなキャラって言いましたけど、そうなんですけどそうじゃなくって！...っわたし、

ウラタロスの声が好きなんです。』

視線を外して語る彼女に一瞬時が止まった気がした。