【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ44)

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#42.うざかわいいとお礼のお酒ページ44

「...うん、美味しい！」

『そう言ってもらえると作った甲斐があります。』

どうやらこの人も食欲という欲求を前にしては一人の人間になるようで、いつもクールで大人っぽく取っ付きにくい所はどこかへポイっと捨ててきたらしい。

むぐむぐと料理を食べる目の前の遊佐さんを目にしながら、私も

『(犬のしっぽと耳が見える...。)』

私の目はおかしくなってしまったのか、犬の耳としっぽを生やした遊佐さんがぶんぶんしっぽを振ってお花を飛ばしながらご機嫌な様子でご飯を食べる姿が瞳に鮮明に映った。

そのまた見たことない姿になんとなく調子が狂い、つい口から出そうになる本音を隠して冷たく毒を吐く。

『遊佐さんってなんか...変な人ですよね』

「ちょ、酷くなぁい？そんなこと言う子には、、こうだ！」

そう言うと、私が楽しみに取っておいたおかずをスっと腕を伸ばして自分の方へと持っていった。

『あっ！それ私の！！』

「ふふーん。早く食べないのが悪いんだぞ〜？」

『私は好きなものは最後に食べる派なんです！

返しっ......、むぐっ！？？』

椅子からガタッと立ち上がり、取られたおかずを取り返そうとした瞬間。口の中に箸で摘まれたなにかが飛び込んできた。

思わずもぐ...と噛み締めると私の好きな味が広がる。

「...どう？美味しい？」

『............っおいしい、です』

ふふ、良かったと言って笑うと、自分が食べている訳ではないのに私以上に幸せそうな顔をしてこちらへ微笑む。

こういう所だ。この人に狂わされる部分は。

なんというか、普段とのギャップも相まって悔しいが...つい、
きゅんとしてしまうのだ。

女の私よりかわいいと感じる時がある。そこがなんだかうざくもありかわいく思う。

調子を狂わされながらも食べ進めていると、目の前の遊佐さんが一息つきながら呟いた。

「ふぅ...なんかお酒飲みたくなってくるねこれ笑」

『それを言うのを待ってました。』

え？と呟く遊佐さんを置いて冷蔵庫へと向い、冷えたビールとほろ酔いを引っ張りだしてテーブルへと持っていく。

するとビールを見た途端、驚きながらも目を輝かせる遊佐さん。

「えっ、これ...いつの間に？」

『その...最近よくお世話になってますし、今日の帰りも車乗せてもらって買い物まで付き合ってもらっちゃったので。せめてもの気持ちです』

気恥しながらも丁寧に説明をする私を驚いた様子で見てふふっと短く笑うと、ほんとにもう素直じゃないなぁと続けてからビールを受け取った。