【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ5)

今日:11 hit、昨日:3 hit、合計:17,952 hit

#4.いつも通りじゃない帰り道ページ5

家までの帰り道を共に歩くこと数十分後、

私達はまたある事で揉めていた。

『いいですって遊佐さん！自分で持てますから！』

「いいの僕が持ちたいからー。」

遊佐さんが私が持っていた荷物の鞄を代わりに持ってくれてくれているのだ。それに私が自分で持てますからと食いついている。

持つ持たせないの会話を繰り返して揉めながらも互いに足を止めることなく歩みを進める。

なにより私が気にしてるのは遊佐さんに荷物を持ってもらってるだけじゃない。問題は今歩いてるこの道なのだ。

私達が住んでる自宅に続くこの道はちょっとした坂になっており、帰るにはこの坂の道を通るか、遠回りして緩やかな道を通って帰るかの2つの選択肢しかない。

そんなキツい道の中、お互い仕事で疲れてるのは確かなのに
遊佐さんは私の鞄を持ちながら少し先を歩いている。

『荷物なら1人で帰る時にいつも持ってます！それに、関係ない遊佐さんに代わりに持ってもらうなんて悪いですしその、、

っですから！』

「Aちゃん」

少し上から名前を呼ばれ足を止める。

道の所為でいつもより少し目線が高くなっている遊佐さんがこちらに振り返り、そんな私は見上げる形で下から少し見上げる。

「今日Aちゃんと帰りたくて待ってたのも僕の勝手だし、
今僕が荷物を持ちたいのも僕の勝手。

だから…

もう少し、僕の勝手に流されてて？」

「あと、"関係ない"なんてそんな寂しいこと言わないでよ？
同じマンションに住む"お隣さん"同士なんだから。」

ね？とさっきと同じように微笑む遊佐さんに私は首を縦に振らざるを得なかった。

何事も無かったかのように前を歩く背に目にしながら、無駄に大きく聞こえる心臓の音と募るモヤモヤに眉をひそめた。

まただ。またこの声に言いくるめられてしまった。

この人は知らない内に私の後ろか横にいて、毎回都合の良い言葉を並べたと思いきや、いつの間にかそれに言いくるめられて、相手を自分のペースに引きづりこんでくる。

さっきまで少し前を歩いていたのに、またいつの間にか私の隣を歩いているこの人にどんどん分からなくなっていく。

そしてなにより、こういうの慣れてます感を出す所がなんとなくムカつくのだ。

なにも変わらない様子で隣を歩く遊佐さんに視線を向けていると視線が重なり、遊佐さんはわざとらしく恥ずかしがる素振りを見せた。