【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ39)

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#37.不意のあざとさ~ダージリンを添えて~ ページ39

驚いた。この人に緊張という概念が存在したのか。

『...遊佐さんにも感情ってものがあったんですね』

「僕のことなんだと思ってるの笑笑」

冷静に言う私に困った様子で笑う遊佐さん。

すると一瞬ばちっと目が合い、なんとなく恥ずかしく感じ視線を逸らす。

『...そういえば遊佐さん、さっきと服装違いますね。』

「そういうAちゃんこそ違うじゃない。僕のためにおめかししてくれたの？」

『客人が来るのに仕事から帰ってきたままの格好で出るのもどうかなと思ったので。一応』

「出たツンツンAちゃん笑」

"一応"を強調して言うと、素直じゃないな〜とクスクスこちらを見ながら笑う遊佐さん。

今の顔を見られたらさらにからかわれそうなのを感じた私は遊佐さんから背を向け、棚からポットと2人分のティーカップを取り出してお茶の用意をする。

『遊佐さん。紅茶苦手とかありますか？』

「んーん。特にないよ」

『分かりました。お砂糖とミルクは？』

「だいじょーぶ。無くても飲めるよ」

話してる内に沸かしたお湯をティーポットに入れ、紅茶をカップに注いで遊佐さんの元へと持っていき、どうぞ。と言って前へ置くと、するとどうしたのか、私の顔ををじっと見つめる遊佐さん。

『...？どうかしました？』

「ずっと気になってたんだけどさ、Aちゃんって良いとこのお嬢様？」

『なんでそうなったのか聞きたいですが、残念ながら私は一般家庭に生まれた平凡女子ですよ』

うっそだ〜？と言いながらカップを持ち、あ。いただきますとぺこっとしてお茶を飲む。

「...うん、すごく美味しい」

『お口にあって良かったです』

「でもとっても美味しく感じるのは、

Aちゃんが入れてくれたからかな？」

頭ををこてんとしてあざとく私を見上げる遊佐さんに不意だったとはいえ、きゅんとつい胸が鳴る自分に少々イラつきを覚える。

後ろでえ、無視...？と呟いている声を気にせずキッチンの方へスタスタ足を運ぶとじっとこちらへ集中する視線が気になり、ちらっと少し振り返って見る。

あまり気にしないように見ていたが、帰りまでとは違う服装をしている遊佐さんは全体的に黒い服に身を包んでおり、いつも大人っぽい雰囲気がさらに際立っていて、普段以上になんだか...。

少しの間とはいえ、そのほんのちょっとの隙をこの人は見逃さなかった。

「んん〜？なになにAちゃん、そんなじっと見つめて」

こういう時のこの人は、どんな時よりも1番楽しそうな顔をする。