【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ4)

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#3.甘い声と甘いマスクページ4

「でも、僕もよく分からないんだ」

『？』

下に視線をずらして肩を落としていた私に少し影がかかる。

かかった影に気を取られ、下に向けていた目線をふと上にあげた

「最近ね、Aちゃんと話すようになってから僕、変なんだ。Aちゃんのことばかり考えて、仕事も手につかなくて…」

「Aちゃんと少しでも一緒にいないと僕、
どうにかなっちゃいそうなんだよ」

いつの間にぐっと距離が縮まったと思えば肩に手を置かれ、それからとびきり甘い声に上から注がれる熱い視線。

さっきまで感じなかったこの甘くて艶やかな空気が私たちを包む。この変な感覚はきっと、前にいるこの人の所為だ。

『…遊佐さん、』

それ応えるように私も肩に置かれたそれに同じく手を重ね、

そして…

『からかってますよね？』

ピシャリと空気を遮断した。

私はすかさず肩に触れられている手をぱっぱとはらう。

すると目の前の人物は喉をくつくつと鳴らしながら、

「あれ、バレちゃった？」

と言ってから、意地悪い笑顔を笑って見せた。

さぁ皆さん、今のでお分かり頂けただろうか。

この男。遊佐浩二という男は、こうして人を散々振り回しからかった後、意地悪く笑い、こちらの反応を見てそれを楽しんでいるのだ。

それ以外にも私がこの人に悩む理由はもう1つあって、

それは…

『相変わらず、無駄に良い顔と良い声してますね』

「んーそうかな？あっ、僕のこと好きになった？」

『いえ全く。酔ってるんですか？』

「え"ー、つれないなぁ…そこは嘘でもいいから、
はいっ♡って言ってほしかったな〜

あ、今日は飲んでないよ」

誘われはしたけどとへらりと笑って付け足す遊佐さんを見てまたため息をついた。

そう、私の悩むもう1つの理由。それはこの人の顔面偏差値と無駄に良いこの落ち着いた色っぽい声だ。

会社の同僚が言うところのいわゆるイケボってやつだろう。

毎回からかってくるこの声をシャットアウトしていても、不覚にもドキッとしてしまう時がある。ムカつくけど。

それを何故私にやってくるのか、理由も分からないまま毎日が過ぎているって所までが今の現状だ。

……はぁ…、なんか思い出すのも疲れてきた。

私は遊佐さんに声をかけて歩き出した。

『もう。早く帰りますよ』

「え？一緒に帰ってくれるの？」

『お酒の席を断ってまで待っててくれた人置いて
1人で帰る程私は冷たくないです。』

振り返ってほら、行きますよ。と声をかけると
はいはいと微笑みながら遊佐さんは私の隣に並んだ。