【声優】やたらと隣人が詰めてくる。【遊佐浩二】 (ページ25)

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#23.この紅潮の冷めどきページ25

遊佐視点

中身がなくなり、部屋から漏れる光が缶に反射する。

秋らしい夜の静かな風が吹いた後、Aちゃんが沈黙を破った。

『………………………………え"っ！？////』

分かりやすく動揺する隣人の様子にまた口角があがる。

あぁ、どうしてこの子はこんなにも僕の心を擽るのが上手なのだろうか。

話しているだけなのに体の底からなんとも言い難い熱い気持ちが溢れ、もっとこの子の声と反応が見たくてみたくてたまらない。

出会って少しの時はこんなの全く感じなかったのに今では自分でも自覚するくらいにこの子に夢中で目が離せない。

声だけの会話だから良いものの、ここにAちゃん本人がいたら僕はどうなっていたのだろうか。

そんな甘い想像をしていると、隣の部屋からガタンっと物が倒れた音がした。

『な、ぇ……い、今なん…て、』

「だから関節k」

『うわぁああああ言うなばかああ！！！！////』

「AちゃんAちゃん、ここ外だから…！」

しーっと伝えるとハッと我に返り声を抑えるAちゃん。

『っっ……どういう、つもり…れすか』

「？どういうって？」

『とぼけないでくだはい…っ！』

よく聞くとさっきと比べて、舌が回っていないような…？

少しの違和感を感じ、隣の部屋の方へ耳を向ける。

心做しか少し息が荒く感じ、さっきまでぎゃあぎゃあ騒いでいたのがウソのようだ。

急にしおらしくなった態度に少し心配していると、僕はある事に気がついた。

さっきAちゃんに渡した僕が飲んでいたお酒の空き缶だ。

やっと全てに気づいた僕が隣へ話しかけようとしたその時。

隣から被せるように声があがった。

『え…ぇ？…かん、せつ…き、す……？

ゆ、ゆささんと…わたし、が………？』

「？？…Aちゃん…？」

声をかけてみるがこちらの声が聞こえていないのかぶつぶつとなにかを呟くAちゃん。

まさかあの残り少ない少量のビールでここまでなるとは思っておらず、心配と不安が入り混じる。

隣を気にして様子を伺っていると、今度はこちらにも聞こえる声で呟いた。

『っっ〜〜〜！！！////

わたし、はじめ、て…なのに…！』

そう言い残すと、ガラッと音を立てて勢いよく開けて部屋に入って行ってしまった。

咄嗟のことで引き止める事も出来ず、呆然とその場に立ち尽くす。

「っはは、

まじ…ですかぁ」

気づいた頃には緩みに緩んだ口元を手で抑え、これでもかと紅潮した顔の熱を感じながら、彼女が口をつけた空き缶に目を向け笑った。