#18波打つ鼓動と引かない熱 ページ19
『遊佐さん！』
いつもはあまり出さない張り上げた声に少し喉がピリピリする。
私の引き止めた声に遊佐さんは驚いた様子でこちらを振り向き、その引き止めた背中に私は駆け寄った。
『え、と…さっきの話の続きなんですけど…、
私、遊佐さんにあんなこと言われるまで全然自分のこと気にしてませんでした…危機感も薄かったなって正直思います。
えっ、と…なので遊佐さん、』
早口でまくし立てながら止まり止まりに息を飲み、だんだん早くなる脈に知らんぷりをしながら、少し目線を上に見上げて前の人物にまっすぐと視線を送る。
『だから、その…。
時間が合った時は…一緒にっ……！
…ﾊｲ』
「…えっ？ちょ…、ちょっと？Aちゃん…？」
『っっ〜〜言いたいことは言いました！！
はい帰りますよ！』
「そんないいところで止めるの！？止めちゃうの！？
超いい所だったのに！ちょおい、Aちゃーん！」
そこで止めるのはナシでしょ！最後まで言ってよー！と後ろで騒ぐ遊佐さんを取り残して、入口のオートロックに番号を打ち込み、急ぎ足で自宅へと続くエレベーターへと向かった。
『っはぁ〜〜、つっかれた…』
鞄を近くに放り投げ、リビングのソファーへと倒れ込む。
あれから結局私達はなにも言葉を交わすことなく、互い自宅へ帰った。
強いて言うなら自宅に入る前に遊佐さんから、また明日ねと声をかけられたくらいだ。
もちろん私はちらりと見てから無視して帰ってきたが。
仕事から帰ってきてソファーに項垂れるのはいつも通りのはずなのに、さっきから止まらない波打つ鼓動と引かない熱に頭を抱える。
『……もう、なんなのよこれ』
1人ぽつりと呟き、白い天井を見上げる。
っていうか今更すぎて気づくの遅れたけど、お隣さんって言ったってそんなお互いに干渉し合わないでしょ普通…。
お互い結局は赤の他人なわけだし……
『あ"あぁーーー…ほんとになんなんだろあの人…』
また頭の中に浮かんできた人物にムッと顔をしかめ手で振り払う。
『……お風呂はいってこよ。』
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作成日時：2023年9月12日 21時
