輝いていた ページ8
「審議した結果、あなたを採用します!」
「…………カオス」
「セトちゃんきたぁぁぁあぁ!!!!」
ごめん俺が一番喜んでる
いや待って、そんなに睨まないで欲しい
「君の名前は?」
「瀬戸口 Aです……いや…待ってください!私素人ですよ!?」
「事務所は?」
「美容師なので所属してないですし私なんかが声優になれませんって!」
「なるほどね…。聞いて欲しい、瀬戸口さん。」
パニックになっているセトちゃんを、監督は真っ直ぐな目で捉えた
「君は、急にマイクの前に立たされたド素人にも関わらず、原作で大人気のアイザワトオル役をやり遂げた。」
「それは……原作を知らないだけで」
「この度胸はなかなか持てたものじゃない。それに君、江口くんが言っていたすごく素質がある人だろ?僕もそう思う。」
監督が俺を見る
この間、世間話の延長で熱烈にセトちゃんの話をした
それをずっと気にかけてくれていたらしい
「それも江口さんが言っているだけで…………」
「それに」
「……はい?」
「私なんかが。と言ったね。」
「…はい。」
「声優なんて。と言わなかった。それだけで僕は君に声優をやってほしいと思った。事務所はすぐ見つかるだろう。というか後ろで既にスカウト待機しているしね。」
俺の背後からひょっこり出る影
手には名刺が握られていた
「俺のマネージャーです。ふふん」
そう言われた彼女は、顔を真っ赤にして目を見開いていた
「なぁ瀬戸口さん。やってみてどうだった?僕は運命だと思った。」
手を強く握りしめて、俯いている
耳まで真っ赤で、口をパクパクしているのを見て、味わったことのない、高揚感に似たような気持ちになった
もう言葉に出せないくらい胸がいっぱいで、セトちゃんが次にどんな言葉を言うのか待ちきれなかった
「………よく分からないけど…すごく…体が熱いです……こんなの知らなかった…求められている事と体が一体になって、全部、出し切れた感じ…」
「セトちゃん…!」
「よし!正式にやってくれるか?この役を。この作品を、君のデビュー作にして欲しい。」
「…………はい。でも、どうなっても知りませんよ…!」
そう言った君の顔は、今までに見た事がないくらい輝いていた
「あの時この業界って変な人多いのかな…って思いました」
「あながち間違ってはないね笑」
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作者名:oguro.san | 作成日時:2019年10月21日 20時