【wrwrd!】あの子愛しの吸血鬼【短編集】 (ページ2)

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やはり真っ暗な部屋で聞こえたのは、焦燥しきった様子の、彼女の掠れた声。

床に座り込んだ彼女と荒れた部屋の中で、きっちりと閉じられたカーテンだけが、
違和感となって存在していた。

いつもと違う部屋の様子に、警鐘が大きくなる。

「なんだこれ…！A！大丈夫？」

走り寄って彼女の両肩を優しく掴むと、彼女は相変わらず感情のない声で、
わたしがやったの、と呟いた。

「…ひとらん、帰って。…お願い」

俯いてそんなことを漏らす彼女のお願いを、聞けるわけがなかった。

なにかを堪えるように息遣いを荒くする彼女の次の言葉を、隣にしゃがみこんで待つ。

帰って、帰って、と繰り返される言葉は、きっと彼女が本当に伝えたい言葉ではない。

繰り返す『お願い』の末に、終には泣き出してしまった彼女の背中を
さすってやろうと控えめに手を伸ばす。

その行動に驚いた彼女が、ようやく顔をあげた。

そして、ようやく、気がついた。

「…お前、その目」

暗闇の中で赤い目を光らせた彼女が、諦めたように自嘲気味に笑ってみせる。

「…わたし、おかしくなっちゃったみたい」