【第五人格】when【短編集】 (ページ7)

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再び始まる恋【小説家】ページ7

本の中の空想の世界。

ドラゴンや魔法に名探偵…

孤独を唯一埋めてくれる小説を書くのが孤児院での遊び。

誰も作品の感想を言ってはくれなかったけれど。

『ねぇねぇ！何してるの？』

そんなある日、一人の病弱な少女に話しかけられた。

私よりも数歳年下の、…8か9位の少女。

彼女の名前は知らない。

ただ、相当な頻度で医務室に連れて行かれているのはたまに見ていた。

余程病弱なのだろうが、常に咳をしているせいで周りから避けられている。

「しょ、小説を書いているんだ。」

私がそう言うと、少女は目を輝かせる。

『お願い！見せて見せて！！』

どうせ見せても、と思ったが、見せても損はない。

彼女は単語を所々知らなかったが、読み終わった後にこう言った。

『うーん、なんか面白くない！』

ショック、と言うよりはむしろ嬉しかった。

初めて自分の小説を読んで貰えて、しっかりとした感想を貰えたから。

それからも彼女はちょくちょく私の元に来ては小説を読みに来た。

感想は毎回それぞれで、面白いと言う日もあればつまらないと途中で読むのをやめる日もある。

彼女は、僕といる時だけ笑顔を見せた。

小説を読んでいる時も、すごく楽しそうで。

そんな君に、私は幼いながら初恋をしたんだ。

でも、此処は孤児院。

数ヶ月後に私はとある荘園の養子として引き取られる事が決まった。

嬉しい反面、Aと離れたくなかった。

私は出発の直前まで、Aと過ごした。

とうとう出発の日。

私は必死に涙を堪えていたが、Aはボロボロと涙を溢している。

『オルフィー行っちゃうの？』

「あぁ。ごめん」

『…あのね、約束！』

「何？」

『私ね、大人になったらオルフィーと結婚する！』

「えっ」

『だから、小説家になって！本を頼りに会いに行くから！』

「分かった。約束だ！」

そんな甘酸っぱい恋の話。

結末を言えば、私は小説家になった。

初恋が未だに忘れられず、彼女も作っていない。

そんなある日の事だ。

私に1通の手紙が届く。

その送り主の欄を見て、私は肩を震わせた。

何故なら____

《オルフィーへ。
　
　私の事。覚えているかな？

　この小説だけど、あんまり面白くなかったよ。
　
　貴方の最初の読者より。》