【第五人格】who【短編集】

〔好きです〕【ポストマン】 ページ17

僕の文通相手は、僕とは真反対の人だ。

運動が好きで、明るくて、話す事が得意。




そんなAさんに、僕は恋をしている。




始まりは、初めて試合で一緒になった時だ。




『君がビクター君ね！宜しく〜』




彼女は凄く距離が近い人で、いきなり話しかけられた。

そして、ずいっと僕の腕を掴んで自己紹介された。




目線を合わせられたのに、怖くない。

それが第一印象。




それから、僕には無いものを持ったAさんに惹かれる様になった。

この時は、敬愛というか…尊敬というか。

そんな感情しか無かった気がする。





もっとAさんと仲良くなりたくて、勇気を出して提案を出した。





『なになに…文通？

　良いね！早速明日書いてくるよ』




初めて貰った手紙の字は、思っていたより綺麗だった。

字を書く事があまり好きそうでは無いと思っていたけれど…

好きな事や試合で面白かった事などが書かれた手紙に、僕は早速返事を書いた。




そこから、Aさんとの距離は一気に縮まった。物理的に。

会うたびに抱きついてきたり、遠くからでも手を振ってくる。




ただ、彼女の友人にもAさんはよくやっていたから、僕もその括りなんだろう。

僕だけが、悶々とした思いを抱えたまま、いつもドギマギしている。




彼女が荘園に来て半年が経った日の事だ。

Aさんが、何やら気まずそうに手紙を渡してきた。




一体どうして…

早速それを読むと、なかにはこんな事が書かれていた。




〔ごめん。ビクター君が私に自分の無いものを求めているのは知っていたよ。

　でも、私はそんな人じゃないんだ。私は話す事も運動も明るく話す事も…

　本当は苦手なの。だから、この文通は心の拠り所だった。

　それでも、もうビクター君を騙したくないから…好きだったよ。ごめんね〕




便箋に書かれた、たった四行の文章。

ただ、僕はそれに失望も落胆もしなかった。




むしろ、他の人が知らないAさんを知れた気がして、嬉しかった。

それで気がついたんだ。



僕は、Aさんの事が好きなんだ。

彼女自身が、好きになったんだと。





僕は居ても立っても居られず、慌てて返事を書いた。

便箋に、たった四文字だけ。




〔好きです〕

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