遅延【傭兵】 ページ2
まず走るのは、衝撃。
次にやってくるのは、体の芯が一瞬冷える感覚。
そして最後に、身体が引き裂かれるような激しい痛み。
目の前が白と黒を繰り返しながら、段々と暗くなっていく。
…あと十五秒なら、出られる。
力が抜けた脚を必死に踏ん張ると、ゲートまで走り出した。
「ナワーブさん、そろそろ諦めたらどうでしょう?
これで三逃げでしょう?」
後ろから聞こえてくるハンターの声が、妙に頭の中で反響する。
俺が飛んでも、勝てる__
その言葉で急に心が揺らぐ。
どうせ荘園に戻れば傷も癒える。
そうして脚を止めかけた瞬間。
『こんの馬鹿!頭下げて!』
霞む視界に、Aの姿が見えた。
彼女は手に持った信号銃をハンターに向けると、引き金を引く。
そして、強い力で腕を引かれた。
彼女はそのまま走り出すと、半分俺を引きずりながらゲートにたどり着いた。
『なに諦めかけてたの?
少しは頼ってくれて良いんだから…』
荘園に戻った時、真っ先に話しかけてきたのはA。
俺の頭をぶっ叩くと、隣にズカリと座り込んだ。
『ナワーブなら肘当てもあったし、かなり速く走ってたんだから間に合ってたよ?
良いよね〜ダメージ遅延されるの。』
「はは、最近はそれ言われてばっかだな。」
単純に言えば、彼女は強い。
体格に似合わない程の力を持っている。
だから、最近は俺がこうして守られてばかりだ。
そして、そんなAの事を好きになるにはそう時間が掛からなかった。
でも、いつどんな事が起こるかも分からないのがこの荘園。
そして俺は、平等に皆んなを守らなくてはいけない。
「大切な人」など、作ってはいけない。
もう二度と失わないために。
『んー?
どうした?ナワーブ』
「いや、何でもない。
飯食いにいこうぜ!腹減ったわ」
この「恋」も、遅らせられたら良いのにな。
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海猫珈琲(プロフ) - あおいさん» 感動して貰えるとは…!凄く嬉しいです!ありがとうございます…!!! (2023年4月12日 8時) (レス) id: b2ab9dc6ab (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます!!五周年の探偵のお話、もう本当に胸が締め付けられました!語彙力がなく上手くこの感動を伝えられなくて悔しいのですがもうほんとに、、好きです!!最高です!!わー!!!探偵!!!って感じです!素敵な作品ありがとうございます! (2023年4月12日 0時) (レス) @page47 id: c7c6235123 (このIDを非表示/違反報告)
海猫珈琲(プロフ) - 3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信さん» ありがとうございます!これからもぼちぼち楽しく更新していきます! (2023年3月20日 10時) (レス) id: b2ab9dc6ab (このIDを非表示/違反報告)
3人の隊長と座長の剣士@自由浮上自由返信(プロフ) - お久しぶりです!お忙しいと思いますが、海猫珈琲さんの楽しめる速度で更新してください!これからも応援しています! (2023年3月20日 9時) (レス) @page45 id: 11410db0e9 (このIDを非表示/違反報告)
えりな(プロフ) - またメンヘラやヤンデレ系のお話も期待してます! (2023年2月26日 3時) (レス) @page41 id: e522d45f72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海猫珈琲 | 作成日時:2022年12月8日 9時