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side.Ryusei
どうやら俺は、彼のことをまだ何も知らないようだった。
その眼差しも、声も、
今日初めて見るものばかりで。
俺ら、友達やったはずなのにな。
しげのこと、何も知らん。
そんな自分の不甲斐なさなのだろうか。
どうも窮屈で息苦しくて。
ほんまに調子狂う。
俺は、映画はエンドロールは見ない方やし、本編終わったら即帰ろうと思ってたんやけど。
彼は本編終わってもそこから1ミリも動かず、じーっと画面を見続けていた。
そして、主演俳優の名前が画面の真ん中に映し出されたのを見て
少しだけ、悔しそうな顔をした。
重「よっしゃ、終わったはよ帰ろ。」
藤「え、見なくていいん?」
その1人だけの名前を見届けると、すぐに帰り支度を始めるから、俺が戸惑う。
重「俺エンドロール見ない派やし。」
いやいや、見てましたやん。さっき。
しかも、あんなに熱心に。
重「もーお腹すいた。なんか食いに行こ。」
藤「何言うてん、お前俺が買ったポップコーン半分以上食うとったやんか。」
おかげで俺は全然食われへんかったのに。
重「お菓子は別腹やねん。ほな、行きましょ。」
いつも通りの笑顔で、わがままなくらい強引に席を立たされた。
映画館の近くにあったカフェに入ると、俺はブラックコーヒー、彼はイチゴまみれで真っピンクになったとにかく甘そうな飲み物を頼んだ。
胃もたれしそうなそれを飲みながら、彼は映画の感想を話し始める。
重「あそこでさ〜、男の俳優が言うたセリフあるやん?」
藤「え、なんか言うとったっけ?」
重「え、覚えてへんの?お前映画見てた?」
藤「ん〜、どうやったっけな。」
映画の最中のこと思い出そうとしても
…あかん。
話すら覚えてへん…
思い出すのはこのガキみたいに笑う男のことばかりで、我ながらその異常さに少し焦った。
重「…まぁ、ええねん。俺が見たかっただけやし。つまらんもんに付き合わせて悪かった。」
それ、いくらやった?と俺のブラックコーヒーを指さして。
重「映画代と2時間ちょい奪ってしもたんやから、それくらい払わせろ。」
なんて言い出して。
藤「…ええよ、そんなん。」
彼はまだ、申し訳なさそうな顔をする。
藤「…でもどうしてもって言うんやったら…」
首を傾げる彼の目を見て、こう告げた。
藤「"お前"の話が聞きたい。」
だって俺、お前のこと何も知らへんから。
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しげじゅん(プロフ) - はじめまして!コメント失礼します! とても素敵なお話ですね!いつでもいいので更新してほしいです!完結を楽しみにしてます!! (2018年1月28日 0時) (レス) id: 5a906eaa64 (このIDを非表示/違反報告)
キラタ(プロフ) - はじめまして!まだ16話なのですが、大好きな作品です(;_;)頑張ってください! (2016年8月20日 16時) (レス) id: 70f0de6510 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎 - 初コメ失礼します!もうコイツら可愛すぎだろ、と毎回更新される度に思います。ちょくちょく出てくるシリアスな場面も私大好きです。健人と重岡の間に何があったのか、これから流星と重岡はどうなっていくのか気になります!更新楽しみにしております(´`* (2016年8月18日 20時) (レス) id: 477d0c9d6c (このIDを非表示/違反報告)
桐山茉莉(プロフ) - 何なんでしょうかこのくそかわいいイキモノ...((( 更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2016年8月17日 18時) (レス) id: e6ae07846c (このIDを非表示/違反報告)
°。+。☆らいちゃん☆。+。゚(プロフ) - しげちゃん可愛すぎてやばいです!!毎回続きな楽しみすぎてやばいです*\(^o^)/*更新頑張ってさい! (2016年8月15日 7時) (レス) id: d11b68e20a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤原 | 作成日時:2016年7月31日 8時