ことだまフラクタル

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side.Ryusei




鳴り響くコール音。


しげは黙って立ち尽くす。



鳴り続ける携帯電話を取る素振りすらしようとしない。






藤｢…出ぇへんの？｣




そう問えば、


彼は大きくため息をついた。




そして、


俺の大嫌いなあの顔。




恨むような、悔しそうな、あの顔。





ようやく、震える携帯電話に手を伸ばす。




重｢……健人？｣


健『あ！しげ！久しぶり。』


重｢…おう。｣




旧友との久々の会話だと言うのに、真っ暗な瞳は変わらない。



何が、どうして、


君をそんな瞳にさせるのか。






健『今実はテレビの企画で、』


重｢…見とるよ。｣


健『ほんと！？嬉しい！』



画面の向こうの彼は、屈託の無い笑顔を見せる。






重｢…映画も、ドラマも、見た。｣


健『そうなんだ。ありがとう。』


重｢…ん。｣


対するしげは、淀んだ表情のまま。







健『ねぇ、しげ。』


重｢…なに｣




健『会いたい。』


重｢……｣


健『ねぇ、会いたい。』


重｢……おう。｣



画面の中の彼は、その返事に嬉しそうに頬を緩めた。



健『連絡するから、返事してね？』


重｢…わかった。｣


健『じゃあまたね？』


重｢…ん。｣





そこまでで、途切れた電話。






いつもと違う様子のしげに集中する視線。



いてもたってもいられなくなった様子で、彼は目をそらした。







重｢…疲れた。寝る。｣



それだけ言うと、踵を返して部屋へと戻ってしまった。







リビングに漂う重苦しい空気と裏腹に、


煩いテレビの画面の中。





『なんか、素っ気なくなかった？』


という女性タレントのコメントに、



健『照れ屋なんです、彼。』



幸せそうにはにかむ男がいた。




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