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どうやら救急隊が到着したらしい。
患者を私に任せて、京先生とキャビンアテンダントの方々が、私達の周りに群がっていた人々を退けていてくれたので、見物客の退避はスムーズに行われていた。
「あ、貴方は…!?」
「私は翔北救命センターの医者です。
今日は訳あってここに」
私服姿の女性が手際よく脈を測り続けるために首筋に手を当てていたら、そりゃ驚かれるだろう。
「同じく医者です。
ヘリもうすぐですかね」
こちらに駆け寄ってきて反対側へ膝をついた京先生に、状況を短く伝える。
「脈拍少し速い。
ヘリはそろそろ…」
「こちらです!」
警備員の声と、いくつかの足音に彼とそろって顔を上げて、軽く微笑む。
────来た。
「────現場に居合わせた医師ふたりって…予想はしてたけど、やっぱりあんた達ね」
「はは、なんやバレとったんか」
肩をすくめた緋山先生が京先生と場所を変わって、彼はそのまま私の後ろに歩いてきた。
「翔北救命センターの緋山です。
聞こえますか?」
「ライン取ります」
彼らにあとを任せながら、私は患者がラインを取る際に動かないよう、肩を固定する。
「エコノミークラス症候群で鼻血?」
「あぁ、俺も不思議や」
緋山先生の疑問に京先生が答えている声が、頭上を通り過ぎていく。
「すみません、患者さんの所持品なんですが…」
そこへ救急隊員の方がひとり、患者の所持品であるリュックと上着を持ってきた。
「あぁ…じゃあこのビニール袋に入れてもらえますか?」
「はい」
「すいません、その中身ちょっと見してもらえます?」
私も一瞬、リュックの方へ目線をずらす。
それでも腕の力は抜いていなかった。
ぐん、と強い力を加えられて、身体が動かされる。
「っ!」
突然痛みを与えられた腕に刺さっていた、名取先生の持っていたラインの針が、心拍音を聞いていた緋山先生の指を誤ってかすめた。
「……いま、これ…」
「…緋山先生、指、大丈夫?」
「…平気。
いいから、早くライン取り直して」
────そのとき、京先生が険しい目つきで緋山先生を見ていたことに、私が気がつくことはなかった。
「…よし、ヘリ運ぼう。
Aに京、ありがとね」
「気をつけてね」
名取先生と雪村さんも、それぞれ頭を下げながらストレッチャーに乗せられた患者とともに、空港を去っていく。
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リラン(プロフ) - 前にも読み終わったんですけど、また読みたくなって読んじゃいました笑ところどころ私の好きな小説と似たようなセリフでてきていて、感動っていうかすごく心に響くめんがありました!改めていい作品です! (2022年7月22日 8時) (レス) @page42 id: f068be0892 (このIDを非表示/違反報告)
クリスティ38(プロフ) - もはや、オリジナルすぎてコードブルー←ではないと思いますが。一個人の感想ですので……夢主以外にオリキャラだした時点で、オリジナル多すぎな時点でもう脱線というか、名前使った別物に感じました。私が、オリジナルやオリキャラ出すの認めてない人なので…… (2019年9月23日 18時) (レス) id: eb0de2c665 (このIDを非表示/違反報告)
Mitsuki - 最近更新されていないようですが、大丈夫ですか?更新されるのを楽しみにしています。 (2017年11月10日 15時) (レス) id: 45294f18cf (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ - なんなんですか!明日学校なのに泣きすぎて目が腫れてしまうじゃないですか!と怒りたくなるくらい面白かったです。これも、何度目かのコメントですが、何回もコメントしたくなるほど面白いです!更新頑張ってくださいね。 (2017年9月19日 1時) (レス) id: c2c72ce877 (このIDを非表示/違反報告)
Kazsaaaan(プロフ) - 初めまして!ずっと1話から読ませていただいておりまして、今回8話のお話が涙なしでは読めなかったので気持ちを我慢できず感想を書きに来ました!もう!大好きです!過去のお話含め、切なさありキュンあり、ハラハラドキドキな毎話。更新楽しみにしています! (2017年9月11日 23時) (レス) id: 5f115adcd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年9月5日 0時