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(白石)
時計を気にしつつHCUで患者のエコーを取っていると、ちょうど川田慎一くんの様子を診ていた灰谷先生が、入口から入ってきた誰かに声をかけたのが、気配で分かった。
「藍沢先生」
「…っ」
────Aの手術、終わったんだ…。
思わず後ろを振り返って、藍沢先生の背中を見つめる。
「腹痛の原因は分かったのか」
「…いえ」
「じゃあやっぱり仮病か」
原因が分からないうえに腹痛があると言われても、さすがに仮病を疑うしか方法がなくなってくる。
「慎一くんは頭の良い子です。
胸を打ってお腹が痛いなんて、そんな辻褄が合わないこと言ってわざわざ疑われるようなこと、しないと思うんです。
でも何もない…!
…やっぱり入院させる必要なかったんですかね…」
そう言ってうなだれる灰谷先生が、なんだか少し可哀想に思えた。
「検査は何か発見ができる場合にのみ意味があるんじゃない。
何もないと証明できれば、患者は安心して家に帰れる。
気になったら答えが出るまでやれ。
…香坂も、きっと似たことを言うだろう」
そう言って私の方へ歩いてくる藍沢先生を、灰谷先生がもう一度呼び止めた。
「…あの!
香坂先生の、手術は…」
藍沢先生は一度私の方を見て、彼へと向き直る。
「────無事成功した。
いまはICUで眠っている」
「よかった…っ」
心底ほっとした様子の灰谷先生と同じように、そのひと言を聞いた私も、ようやく肩の荷が降りたような気がした。
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(名取)
香坂先生の手術が無事に成功したことは、先ほどスタッフステーションに顔を出した京翔貴という心臓血管外科の先生から聞いた。
藤川先生によれば、彼は大阪の病院からはるばる香坂先生の────予定であれば急性冠症候群の手術のために、今日から彼女の退院まで翔北で勤務をするらしい。
ちなみに配属は救命だというのだから、軽く驚いた。
ICUに消えた京先生を見送って、パソコンを見ていると、聞き慣れた声が耳に届く。
「すいません、緋山先生は…」
緋山先生、という単語に、雪村さんに言われた言葉が頭の中を回り出す。
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リラン(プロフ) - 前にも読み終わったんですけど、また読みたくなって読んじゃいました笑ところどころ私の好きな小説と似たようなセリフでてきていて、感動っていうかすごく心に響くめんがありました!改めていい作品です! (2022年7月22日 8時) (レス) @page42 id: f068be0892 (このIDを非表示/違反報告)
クリスティ38(プロフ) - もはや、オリジナルすぎてコードブルー←ではないと思いますが。一個人の感想ですので……夢主以外にオリキャラだした時点で、オリジナル多すぎな時点でもう脱線というか、名前使った別物に感じました。私が、オリジナルやオリキャラ出すの認めてない人なので…… (2019年9月23日 18時) (レス) id: eb0de2c665 (このIDを非表示/違反報告)
Mitsuki - 最近更新されていないようですが、大丈夫ですか?更新されるのを楽しみにしています。 (2017年11月10日 15時) (レス) id: 45294f18cf (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ - なんなんですか!明日学校なのに泣きすぎて目が腫れてしまうじゃないですか!と怒りたくなるくらい面白かったです。これも、何度目かのコメントですが、何回もコメントしたくなるほど面白いです!更新頑張ってくださいね。 (2017年9月19日 1時) (レス) id: c2c72ce877 (このIDを非表示/違反報告)
Kazsaaaan(プロフ) - 初めまして!ずっと1話から読ませていただいておりまして、今回8話のお話が涙なしでは読めなかったので気持ちを我慢できず感想を書きに来ました!もう!大好きです!過去のお話含め、切なさありキュンあり、ハラハラドキドキな毎話。更新楽しみにしています! (2017年9月11日 23時) (レス) id: 5f115adcd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年9月5日 0時