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(藍沢)
カーテンで仕切られた診察室、灰谷が隣で診ているのは、腹痛を訴える男児だ。
「藍沢先生、藍沢先生」
「…なんだ」
「左即胸部を打った男の子なんですけど、腹部の軽い圧痛が気になって…」
駆け込んで来た彼に、状況を聞き出す。
「画像とデータは見たのか」
「何も異常ありませんでした」
────どういうことだ?
そんな意味を込めながら眉を寄せて灰谷を見れば、その視線に彼は目を泳がせる。
「…すいません…」
ああ、こんなとき彼女ならば、素早く次の対策を講じるよう、それとなく指示ができるのだろうに。
「でも痛がってて…」
────ベッドの空きあるなら、様子診たらいいんじゃない?
きっと、けろりとそんなことを言うのだろう。
「…ベッドの空きはあるのか」
「えっ…はい」
────あいつは、子どもには甘い。
「なら1日、病院で様子見ればいい」
「はい…!」
腹痛を甘く見てはいけないのは事実だ。
足早に戻っていった灰谷の声が聞こえる。
「お母さん!」
「はい」
「入院しましょう!」
「入院!?」
────まぁ、普通そうなるな。
母親のすっ飛んだ声を耳に、息子が灰谷を見上げて微笑んでいたことを、知る者はいるのだろうか。
────あいつは、そろそろ空港に着く頃か。
昨日、久々にバイクを出すのだと言っていたのを、俺が無理やり止めたのは記憶に新しい。
結局バスで行かせることに成功した。
もし万万が一、バイクに乗っている際に症状が出て事故でも起こしたらとも思うと、気が気でない。
ひそかに気に止めながら、俺は診察室を出た。
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(京)
搭乗時間を予め伝えておいたのが良かった。
ちょうど降り立ったところで、スマホが着信を告げる。
画面には予想通り、香坂の文字。
「はいよー」
『長旅お疲れ様です、何番ゲート?』
プライベートではすっかり気が抜けているのだろう、たまに敬語が交じることもあるが、いまではすっかりひとりの女性だ。
「2番やな、いま出たとこや」
『OK.いま到着したところなので、少し待っ……』
変なところで途切れた通話に、どないしたと眉を寄せる。
「香坂?」
『────京先生、すぐに到着ロビーまで来て、男性が倒れた』
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リラン(プロフ) - 前にも読み終わったんですけど、また読みたくなって読んじゃいました笑ところどころ私の好きな小説と似たようなセリフでてきていて、感動っていうかすごく心に響くめんがありました!改めていい作品です! (2022年7月22日 8時) (レス) @page42 id: f068be0892 (このIDを非表示/違反報告)
クリスティ38(プロフ) - もはや、オリジナルすぎてコードブルー←ではないと思いますが。一個人の感想ですので……夢主以外にオリキャラだした時点で、オリジナル多すぎな時点でもう脱線というか、名前使った別物に感じました。私が、オリジナルやオリキャラ出すの認めてない人なので…… (2019年9月23日 18時) (レス) id: eb0de2c665 (このIDを非表示/違反報告)
Mitsuki - 最近更新されていないようですが、大丈夫ですか?更新されるのを楽しみにしています。 (2017年11月10日 15時) (レス) id: 45294f18cf (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ - なんなんですか!明日学校なのに泣きすぎて目が腫れてしまうじゃないですか!と怒りたくなるくらい面白かったです。これも、何度目かのコメントですが、何回もコメントしたくなるほど面白いです!更新頑張ってくださいね。 (2017年9月19日 1時) (レス) id: c2c72ce877 (このIDを非表示/違反報告)
Kazsaaaan(プロフ) - 初めまして!ずっと1話から読ませていただいておりまして、今回8話のお話が涙なしでは読めなかったので気持ちを我慢できず感想を書きに来ました!もう!大好きです!過去のお話含め、切なさありキュンあり、ハラハラドキドキな毎話。更新楽しみにしています! (2017年9月11日 23時) (レス) id: 5f115adcd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年9月5日 0時