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天野さんに詰め寄ろうとしていたAの、すべての動きが一瞬にして止まった。
薄茶の瞳はひび割れて、ただ呆然と彼女を見つめていたが、やがていたたまれなくなったように席を立って、入ってきたときと同じように病室から駆け出していく。
「A！」
呼びかけてもその背は止まることなく、あっという間に足音まで遠のいていった。
「……ふたりとも、ひどいよ…」
「あいつを責めないでやってくれ。
…自分の心臓がいつ止まってもおかしくない中、あいつは君の手術を俺に優先させたんだ。
たとえ倒れようとも、最後まで医者であろうとしたんだ」
少しでもいい、彼女に届くようにそう言い残して、静かに病室を出る。
近くにはいなかったため、医局に戻ってみれば予想どおり、小さなかたまりがタオルケットを被ってソファの上にいた。
「…A」
近寄って名前を呼んでも、もぞりとわずかな反応があるだけで。
ため息をついたとき、鼻の詰まった小さな声が耳に届いた。
「………なんで」
────ばさっ。
「なんでトロント大の推薦、辞退したの」
思い切りタオルケットを跳ね除けたせいで、ぼさぼさになってしまった髪をそのまま、彼女は腫れた目元で見上げてくる。
「……それが俺にできる、唯一のつぐないだ」
「違う！そんなの違う…！
なんで、これじゃあ私が降りた意味ないよ…」
日本に戻ってきてから、彼女の涙ばかり見ているような気がする。
心が優しすぎるから、誰かのために涙を流せる。
ときに厳しく、押し潰されそうな状況でも、自分が進むべき道を指し示してくれる。
「……もう、泣くな」
「誰のせいだと思って…！」
言ってから、はっと驚いて口をつぐむ。
涙は引っ込み、小さな頭がうなだれた。
「…ごめん、こんなこと言いたいんじゃない」
「わかってる」
絡まった細い髪を、静かに梳いてやる。
痛いほどに、その気持ちがわかるから。
どれほどその心は傷められて、涙を流してきたのか、わかるから。
「……帰るね。
京先生にちゃんと寝ろって怒られちゃった」
そう言って、顔を合わせずに医局から出ていく。
その背中になんと声をかけて良いか、言葉が見つからなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(香坂)
────あぁ。
そうやってまた、逃げるのは。
私の、弱ったときの悪い癖だ。
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琴子(プロフ) - こちらの誤字。先日ボードにお願いした2のリクエスト訂正があります。樋山先生が藤川までとブチ切れる…の樋山。ではなく緋山です。返信不要。よろしくお願いします。また！ (2017年9月4日 16時) (
レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
kii - 白石先生のリクエスト叶えてくださりありがとうございました！本当に白石先生そのもので感動しました！ついに明日はコードブルー放送日ですね！緋山先生がどうなっちゃうのか…更新も楽しみにしています！頑張ってください！ (2017年9月3日 23時) (レス) id: 7fea498993 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - たむ。さん» 訂正しました、ご指摘ありがとうございます。 (2017年9月3日 18時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
たむ。(プロフ) - 次回予告、「感動」ではなく「感度」になってます!!! (2017年9月3日 18時) (レス) id: 2fb288b2c4 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 藍沢先生誕生日話面白かったです！( ^ω^ )生誕祭ですね♪ 来年も、絶対香坂先生は隣にいますよ♪ (2017年9月3日 15時) (レス) id: eeb5e94ce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月29日 0時
