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(香坂)
「せん、せ…っ」
「はい」
涙で頬を濡らす美央さんが、私に手をのばす。
その手を両手で握り込んで、ひとつ頷いた。
「────緋山先生」
私はどうしようかと考えあぐねている表情の緋山先生をこちらへ呼んで、悩んだであろう検死結果報告を促す。
────大丈夫、いまの彼女なら。
きっと、受け入れられるから。
「…大島さん。
大島将さんの検死結果を、お伝えしたいのですが」
私は、傍らで見守っていよう。
身体の前で手を組みながら、そっとベッドが運ばれて言った先に目線を移す。
預けることしかできない、いまの自分が恨めしい。
「……直接の死因は、大動脈破裂による、失血死でした」
美央さんは、緋山先生の差し出した検死結果の用紙を唇を噛み締めながら受け取る。
「怪我のほとんどは、左半身に集中しています。
おそらく、将さんの右側には、貴方がいましたよね。
…事故の瞬間、将さんが何を思っていたのか…それは誰にも分かりません。
ですが私は、この検死結果を見て、思いました」
緋山先生に歩み寄って、その背に静かに自分の手のひらを置いた。
「将さんは────貴方のことを守ろうとしたのだと」
瞬きをした美央さんの左目から、止まっていた涙がまた一筋、こぼれ落ちていく。
それを見つめながら、私は口を開いた。
「美央さんが生き残ったのは、将さんの…貴方への最後の願いだったから。
────彼が、そう望んだからだと思います」
「…っ、……────っ…！」
嗚咽とともにあふれ出した涙は、何よりも綺麗だと思った。
「…ありがと」
「ううん。
いまは、このくらいしかできないから」
緋山先生のささやきに、小さく首を振りながら返す。
ブラインドの隙間から入ってくる夕日が、あたたかい。
誰かのために流される涙が、こんなにも美しいものだと知ったのは、フェロー時代。
忘れない。
あの日流した、後悔の涙を。
大切な人達を失い、また、失いかけてしまった自分の無力さを。
涙は、心のリセットだ。
泣いて泣いて、泣き止んだら、また新しい自分になれている。
そこからまた、始めればいい。
「生きてください。
将さんの、分まで」
私の言葉に、美央さんはしっかりと頷いた。
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琴子(プロフ) - こちらの誤字。先日ボードにお願いした2のリクエスト訂正があります。樋山先生が藤川までとブチ切れる…の樋山。ではなく緋山です。返信不要。よろしくお願いします。また！ (2017年9月4日 16時) (
レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
kii - 白石先生のリクエスト叶えてくださりありがとうございました！本当に白石先生そのもので感動しました！ついに明日はコードブルー放送日ですね！緋山先生がどうなっちゃうのか…更新も楽しみにしています！頑張ってください！ (2017年9月3日 23時) (レス) id: 7fea498993 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - たむ。さん» 訂正しました、ご指摘ありがとうございます。 (2017年9月3日 18時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
たむ。(プロフ) - 次回予告、「感動」ではなく「感度」になってます!!! (2017年9月3日 18時) (レス) id: 2fb288b2c4 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 藍沢先生誕生日話面白かったです！( ^ω^ )生誕祭ですね♪ 来年も、絶対香坂先生は隣にいますよ♪ (2017年9月3日 15時) (レス) id: eeb5e94ce7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月29日 0時
