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(名取)
三井先生、だったかな、彼女に付き添ってもらって病室に戻っていく香坂先生の背中を、ただじっと見つめていた。
どう反応したらいいのか、わからなかった。
何ていうか、仲間って感じを見せつけられたというか。
藍沢先生のあの表情を見る限り、彼は最初の方から知っていたのだと思った。
驚いて、喜んで、いろんな感情が流れ込んできて、最後の最後には苦しくなった。
どんなに足掻いても、どんなに離れているように見えても。
────あの2人の間に入り込める隙間など、なかったのかもしれない。
お互いがお互い、多くを語らない人たちだ。
けれど、藍沢先生のそばには香坂先生がいて、尊敬しあえて、競い合って。
多くの言葉なんて、いらないほどにお互いの心が分かっている。
「………ははっ、恋人じゃん」
周りが誤解するのも、当然の話のように思える。
では、なぜくっつかないのか。
その答えは、ほかの誰でもない、彼らだけが知っているのだろうか。
それとも────────。
「一緒について行かなくていいわけ?」
緋山先生がちょいちょいと肘でつつきながら藍沢先生に尋ねている。
対する彼は、しれっとした顔で答えた。
「三井先生がいるだろう」
「心配で堪らないくせに…どうせ今回の件だって、あんたが促したんでしょ、あの子のこと」
「…半分な」
ということは、一度決めたらてこでも動きそうにない香坂先生を納得させることのできる人が、他にもいるということで。
「あー…野犬か」
「恐らくな」
「ちょっと緋山先生、いないからってそんな呼び方しないであげてよ」
ぼそっとつぶやいた緋山先生を、すかさず白石先生がたしなめる。
頭上に疑問符を浮かべる俺らフェローに、藤川先生がわかりやすく解説してくれた。
「俺らのもう1人の同期でさ、ちょうど香坂が帰ってくる前までな、あー、一応専門は心臓血管外科だけど、とにかく心臓のスペシャリストがいたわけよ。
そいつのあだ名」
「随分盛ったな」
「たしかに」
藤川先生の言葉にいち早く返した藍沢先生と緋山先生に、白石先生が苦笑を浮かべた。
「…本人聞いたら泣くよ?」
そんな凄い人がついてるなら、安心しても大丈夫だとほっとする。
────いつか、会えたりすんのかな。
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yui - いつも楽しく読ませていただいております!単語についてなのですが、6話の5ページ、「コークリフト」とあ(ますが「フォークリフト」かと思われます。倉庫内で重いものや大きいものを移動させる乗り物です。 (2017年10月13日 16時) (レス) id: 30abdae40f (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 18の守口さんの名前が森口さんになってましたので報告させていただきました (2017年10月7日 13時) (レス) id: 1a1e66043f (このIDを非表示/違反報告)
kii - 仕事の話し(患者さんとか)でもいいし、プライベートでもいいし、シリアスな感じでもいいし…とにかく香坂先生と白石先生が会話をしているところをもっと見たいです(笑)突然のお願いですみません!これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
kii - 6話完結おめでとうございます!いつも楽しい作品を作ってくださりありがとうございます!またまたリクエストなのですが、最近藍沢先生との絡みが多いので(不満とかそういう意味じゃないです!)白石先生との2人のシーンが欲しいです!できれば藍沢先生の恋愛話は無しで… (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
nee - こんばんは!いつも作品見させてもらってます!リクエスト?意見?なのかわかりませんが名取先生には香坂先生から緋山先生に恋心移ってほしくないっていうか……無理なこと言ってすみません!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 363a4b4fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月22日 0時