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私がそんな葛藤と戦っていると、横峯先生がはっきりと言い切った。
「……いい、私やる。
香坂先生、サポートお願いできますか?」
「…ん、大丈夫」
手元に用意していたメスを、そっと彼女に手渡す。
患部のミックスベジタブルの
守口さんは、痛がるそぶりを見せない。
「守口さん、我慢…できそうですか?」
私の問いに、彼は何度か頷いてくれる。
「凄い…ほんとうに氷で、痛みを抑制できてますね!」
「……でも…問題はここからだよ…」
そう、次の工程は────。
『脂肪を裂いて大腿動脈を露出させて』
サテンスキーを横峯先生に手渡しながら、私はわずかに顔をしかめた。
────…不整脈。
心臓を独特の圧迫感が襲う。
痛くはないが、あの嫌な感覚が続いて、くっと息を詰まらせた。
サテンスキーが患部に差し込まれた────次の瞬間。
「────いたい!
っあ、ぁあぁぁ…!」
悲痛な叫び声に、横峯先生が反射的にサテンスキーを抜いてしまう。
────厳しいな…。
「いたい、った、い…!
…あ、あぁぁぁ────っ!」
「頑張ってください、守口さん…!」
異物に皮下組織を抉られる感覚は、たとえ冷やしていたとしてもダイレクトに痛みを神経から伝って送られる。
絶叫している守口さんを灰谷先生が必死で宥めているけれど、彼だっていますぐここから逃げ出したいと思っているはずだ。
横峯先生は何度か血管を探って、思いつめた表情で灰谷先生のモニターを見つめた。
「だめです……血管、見つかりません…」
────どうする。
このまま放っておいたら、確実にそう遅くないうちに足が壊死する。
そうなれば、切断以外に方法は、ない────。
『……位置が違うのかもしれない。
もう一度切って。
もう少し鼠蹊靭帯に近いところ』
白石先生の声は、私の耳にも届いている。
「……もう、一度?」
その言葉に、守口さんが涙を流しながら横峯先生を見つめた。
「………やめてください…。
お願いします、やめてください…!」
『横峯先生?』
白石先生の語気が強くなる。
ここでやめたら、この人の足は、命は。
────未来は。
「無理です…麻酔なしでこんな…っ、できません!」
彼女は血にまみれたサテンスキーを落として、慌てて患部に氷嚢をあてた。
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yui - いつも楽しく読ませていただいております!単語についてなのですが、6話の5ページ、「コークリフト」とあ(ますが「フォークリフト」かと思われます。倉庫内で重いものや大きいものを移動させる乗り物です。 (2017年10月13日 16時) (レス) id: 30abdae40f (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 18の守口さんの名前が森口さんになってましたので報告させていただきました (2017年10月7日 13時) (レス) id: 1a1e66043f (このIDを非表示/違反報告)
kii - 仕事の話し(患者さんとか)でもいいし、プライベートでもいいし、シリアスな感じでもいいし…とにかく香坂先生と白石先生が会話をしているところをもっと見たいです(笑)突然のお願いですみません!これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
kii - 6話完結おめでとうございます!いつも楽しい作品を作ってくださりありがとうございます!またまたリクエストなのですが、最近藍沢先生との絡みが多いので(不満とかそういう意味じゃないです!)白石先生との2人のシーンが欲しいです!できれば藍沢先生の恋愛話は無しで… (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
nee - こんばんは!いつも作品見させてもらってます!リクエスト?意見?なのかわかりませんが名取先生には香坂先生から緋山先生に恋心移ってほしくないっていうか……無理なこと言ってすみません!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 363a4b4fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月22日 0時