10 ページ12
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(香坂)
『灰谷先生モニター入れた。
こっちから見えてる』
「白石先生?」
────よかった…。
恵ちゃんの声に心底安堵しつつ、私は二人に見えない角度でその場に腰を下ろす。
手の震えがひどく、蒼白くなっていた。
────このまま進んだら…凍傷になる…。
『もう少し患部の方見せて?』
「はい」
灰谷先生が患者の足の方へ身体をずらすのを見ながら、私はそっと震える手でなんとか患者へと酸素マスクをつける。
『見えた…香坂先生はなんて言ってる?』
「動脈損傷だって仰ってます」
この出血の量、明らかに大きな血管が切れている。
『その可能性が高いわね。
ドアが開くのは待ってられない…』
────その、意味することは。
「ここで、足を切開するんですか…?」
『そう。
…香坂先生に任せて、二人はサポートに回った方がいいかもしれない。
────……ねぇ、香坂先生さっきから映らないけど、どこにいるの?』
────なんでかな…恵ちゃんの声が反響して聞こえる…。
「香坂先生なら、横峯先生の後ろに…」
ここまで凍えた身体を叱咤してきたけれど、もう目の前が霞んでよく見えない。
ふらりと身体が傾いて、私は横峯先生に身を預けるようにして目を伏せた。
「えっ、香坂先生!?」
「は…っ」
────ごめん、横峯先生、重いよね…。
『灰谷先生、Aに近づいて!』
「はっ、はい!」
慌てた様子で灰谷先生が私に近づく。
ライトを向けられて、少し目をすがめる。
「呼吸、早いです…!」
『全身の震えと早い呼吸、ぼんやりとした意識…。
────低体温症か…まずいわね…』
ハーッと音を立てて呼吸をするたび、肺に負担がかかるのか、重い痛みを感じる。
こんなときに…と頭で悔やんだとき、ふわりと私の身体をあたたかい何かが包んだ。
「……よ、こみねせんせ…」
「これ、着てください!
私ならまだ大丈夫ですから」
────でも、それじゃあ貴方が。
そう紡ごうとしたとき、ふっと意識が遠のきかけて、慌てて頭を左右に振る。
『香坂先生、動かないで』
「ごめ…この手じゃ……結紮でき、ても…切開は…」
途切れ途切れになんとか伝えると、私の前でフェローふたりが顔を見合わせた。
3938人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yui - いつも楽しく読ませていただいております!単語についてなのですが、6話の5ページ、「コークリフト」とあ(ますが「フォークリフト」かと思われます。倉庫内で重いものや大きいものを移動させる乗り物です。 (2017年10月13日 16時) (レス) id: 30abdae40f (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 18の守口さんの名前が森口さんになってましたので報告させていただきました (2017年10月7日 13時) (レス) id: 1a1e66043f (このIDを非表示/違反報告)
kii - 仕事の話し(患者さんとか)でもいいし、プライベートでもいいし、シリアスな感じでもいいし…とにかく香坂先生と白石先生が会話をしているところをもっと見たいです(笑)突然のお願いですみません!これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
kii - 6話完結おめでとうございます!いつも楽しい作品を作ってくださりありがとうございます!またまたリクエストなのですが、最近藍沢先生との絡みが多いので(不満とかそういう意味じゃないです!)白石先生との2人のシーンが欲しいです!できれば藍沢先生の恋愛話は無しで… (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
nee - こんばんは!いつも作品見させてもらってます!リクエスト?意見?なのかわかりませんが名取先生には香坂先生から緋山先生に恋心移ってほしくないっていうか……無理なこと言ってすみません!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 363a4b4fa6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月22日 0時