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(藍沢)
粗方の処置が片づいたとき、Aはいつになく疲れきった顔をしているように思えた。
「意識障害の原因は低酸素脳症だろう」
「植物状態ですか…」
「その可能性もある」
横峯の言葉にそう返すと、患者のそばについていたAが、眉を下げて付け加える。
「溺れた時間が長すぎたね…」
処置台から移したとき、別行動で骨折の男性を診ていた名取が戻った。
「戻りました」
「どうだった?」
「あー、上腕骨骨折のレスキュー隊員は、現場近くの酒々井中央の救命病院に受け入れてもらいました。
ほかの二人は軽傷なんで、神里北病院に」
そのとき、ホットラインではなく初療室に備え付けの電話が着信を告げる。
「あ…」
「あー良いですよ香坂先生、僕出ます」
丁度手の空いていたAが駆け寄ろうとしたところを止めて、自ら受話器を取った。
「はい。
…あぁ名取です、先ほどはどうも。
…────え?」
「…ん?」
「どうしたの」
そのまま戻りかけたAはその場で身体を半回転、白石は名取に素早く聞き返す。
ゆっくり振り返った彼は、ふたりの顔を見ながら口を開いた。
「……酒々井中央病院から…いま運んだ患者が急変したって。
ショック状態で意識ないみたいです」
その言葉にAと顔を見合わせる。
俺も彼女も、そこまで骨などには詳しくない。
────藤川の出番だろうが…。
いま、彼は。
名取から電話を変わった白石が、向こうの病院の人と対話をしているのが聞こえてくる。
「…わかりました、すぐにヘリで向かいます」
そのまま雪村とともに出ていく背中を俺たちは見送って、Aは椅子に腰を下ろした名取に声をかける。
「…大丈夫?」
「あぁ、はい…すみません」
そのまま処置室の方へ目線をずらした彼女の背を優しく撫でて、俺はそっと囁く。
「お前の方こそ大丈夫か」
「…平気、先輩頑張らないとね」
青白い顔で笑うAを気にかけつつ、俺は白石たちが連れて帰るであろう患者を受け入れるため、準備に取りかかった。
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です!ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!表現が私の好きな表現で一気読みでした!映画も書かれますか?楽しみに待ってます! (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´。pωq。`) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月15日 0時