short story -寝顔注意報。- ページ41
のあんこさんリクエスト・29番外編
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(藍沢)
珍しく某SNSが通知を告げたのは、時計の長針と短針が重なりかけた頃だった。
────…緋山?
緋山先に頂きました、悪いね?
「…、っ」
そのメッセージとともに添えられていたのは、クッションを枕がわりに、白いタオルケットにくるまるAの、穏やかな寝顔の写真。
伏せられた長い睫毛は影を作り、薄く開かれた桃色の唇は笑みを浮かべている。
実物にこんなにも近づいたことは無かったが、この近さになるとより肌の白さと透明感に拍車がかかる。
────綺麗、だな。
髪色が明るくて顔立ちもどちらかと言えば、幼いがはっきりしている。
無言でいたり手術となった際の雰囲気は、どこか近寄りがたく、手の届かない────高嶺の花のような印象を与えるが、ひとたび医者の皮を脱ぎされば、そこにいるのは実年齢より幼く見える、ひとりの女性に他ならないのだ。
緋山のメッセージに既読だけをつけて、俺はスマホの電源を落としてベッドに沈む。
────………反則だろ…。
眠気なんて、とうの昔にどこかに飛んでいってしまったではないか。
こみ上がったどうしようもない気持ちを洗い落とすために、ひとつ息を吐いて風呂場に足を向ける。
その元凶である彼女は、こちらの気持ちなどお構いなしに、いまごろ健やかな眠りの中にいるのだろう。
────点滴は大丈夫そうだな。
あれ以上無茶をするようなら、無理にでも捕まえて処置のひとつやふたつしようかと考えていたが、白石たちのおかげで必要はなさそうだ。
フェロー時代から自分のことは後回しにする癖があったので、LAに行くときも心配で堪らなかったのだが。
予想どおり、彼女の身体はぼろぼろだった。
本当はいますぐにでも職場を離れさせて手術して欲しいものだが、それを承諾するはずもなく。
黒田先生もそれを分かっているから、強制はしないのだろう。
ただ、1人を除いては。
────無茶はさせられないな。
薬で抑えているとは言えど、限界はある。
自分の推薦が決まるまでに、手術を受けさせよう。
あの幸せそうな寝顔を、できることなら毎日浮かべていて欲しいから。
願わくば、その夢が幸せなものであることを。
寝顔注意報。 -Fin-
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です!ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!表現が私の好きな表現で一気読みでした!映画も書かれますか?楽しみに待ってます! (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´。pωq。`) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月15日 0時