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(香坂)
鞄の中に埋もれていたスマホが、バイブとともに着信を知らせる。
────美帆ちゃん?
「どしたのー?」
『あんた今夜予定ある?』
「いや特にないけど…いま恵ちゃんの家?」
これはあれかな、ご飯食べようのノリかな?
そんなことを考えながら部屋のドアの内側で突っ立っていると、ちょっと貸してという声とともに美帆ちゃんの声が遠くなる。
『Aごめんね、急に。
緋山先生と話してて、ウチ来ないかなって思って』
次に聞こえたのは、恵ちゃんの声だった。
「おっ、いいねぇ。
キッチン借りていいならさ、ご飯作ってもいい?
ホテル暮らしだから食事がね」
『それは別に構わないけど…。
そんなんだから吐いちゃうんでしょー?』
「いやあ、仰るとおりで」
あはは、と乾いた笑いをこぼしていると、「Aの!手作りごはん!」なんて美帆ちゃんの声がエコーかかって聞こえてきて、行こうと思えてくる。
「じゃあ材料だけ軽く買っていくから、地図送っといてくれる?」
『わかった。
バイクだよね?』
「うんー、さすがに夜道はひとりで歩きたくないかな」
LAにいる間、何回かつけられたことあるんだよね…まあ足には自信があったから振り切って撒いたから大丈夫だったんだけど。
…あ、いまの耕作には内緒ね?
『そんなことさせたら私達が藍沢先生に怒られるからしないよ。
ねぇー緋山先生』
『そーそー、愛しのAだもんねぇ〜』
「もー、そんなんじゃな…」
ないよ、と言おうとして、頬のあたりに熱が集まるのが自分でも分かる。
心臓がとくんとくん、と速い鼓動を刻み出して、私は慌てて頭を振った。
────ばか、なに意識してんの…。
「ふたりとも酔いすぎ!
じゃあ着いたら連絡するから!」
『ふふ、恋バナお待ちしてまーす』
────もうそんな年齢じゃないっての…。
軽く髪をかきあげて、今日の症状が出た回数を思い出す。
深夜に1回、昼間の休憩で軽いのが1回、耕作を待っている間の医局でさっき1回。
考えたくないが、仕事に復帰して動き回って、疲れのせいで栄養が偏ってしまっているせいで、ここ最近回数が増えている。
────休み、いつ取ろう。
大阪だから日帰りでなんとか行けるかと思いながら、火照った顔を冷やすために、ヘルメットを片手に私はもう一度外へ出た。
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です!ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!表現が私の好きな表現で一気読みでした!映画も書かれますか?楽しみに待ってます! (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´。pωq。`) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月15日 0時