A person near you．1 -寄り添う人- ページ3
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(藍沢)
誰かが医局に入ってきた音で、眠りの底に沈んでいた意識が引き戻される。
ぱっとソファを見れば、俺と同じように手術着のままのAが、薄手のタオルケットにくるまって、もぞりと動いたところだった。
そのはずみで頬にかかったひと房の髪を、さらりと払いのけてやる。
びしょ濡れで医局に入ってきた藤川に、後で拭かないとなと床を眺めつつ、隣で起き上がった小さな頭を、ぽんとひとつ、労いの意味も込めて軽く叩いた。
「あ〜もうひっでぇなぁ…、うわ！
…なんだよ二人そろって徹夜？オペ？」
「……あれ、ホテルじゃない…」
どうやら彼女、まだ意識が覚醒していないらしい。
「天野奏の緊急手術だ。
ICUの杉原さんの急変も重なった。
…転ぶなよ」
「はいよー…」
いささか頼りない返事とともに、おぼつかない足取りで────コーヒーを淹れるのだろう、歩き出したAを横目に、俺は眠気の残る身体を叱咤して自分のデスクへ戻った。
「なんだ雨か」
「もう止んだよ。
お前らがそんなに疲れてるってことは相当だな。
でももうこっちもヘトヘトだよ、奥さんの機嫌が悪くてさぁ」
マグをかき混ぜながら戻ってきたAは、いつものコーヒーよりほのかに甘い香りを纏っている。
────カフェオレか。
「…あ、それ美味しいとこのトマト」
白石の席を拝借しながらぽつりとこぼした彼女は、珍しそうにその箱を見ていた。
「そーそー当たり！
紅っ娘、パラダイス…、もう朝から探した探した。
これで俺の平和は保たれる」
「良かったねぇ、まだ安い平和で…」
そう言ってトマトを掲げてみせる藤川に、Aは苦笑混じりに返す。
「いります？」
投げてよこしてきたトマトを再び藤川に返して、のほほんとカフェオレを飲んでいるAに声をかけた。
「お前も着替えてこい」
「これ飲んだら行く。
あー…眠気覚ましのコーヒー、いる？」
「…頼む」
……そんなに眠そうな顔をしていただろうか。
あくびをかましながら、俺は着替えるために一度医局をあとにした。
だから、藤川と彼女の残った医局で、こんな会話がなされていたことは知らない。
「美味しそう…」
「はは、ひとつくらいやるよ」
「パパありがとう」
もはや、会話を聞くだけでは親子である。
2→←Bitter chocolate． -溶けて、溺れて-
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (
レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です！ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！表現が私の好きな表現で一気読みでした！映画も書かれますか？楽しみに待ってます！ (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´｡ｐωｑ｡｀) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月15日 0時
