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「お前の仕事は、そういう仕事だ。
ドクターヘリだってそうでしょ？」
そう聞かれて名取先生は、いたたまれなくなった様子でICUを後にする。
Aはその姿を見送って、苦笑しながら肩をすくめた。
「…もうちょっと、かなぁ」
彼女は人の心が、よく分かる。
けれど同時に────人の心の痛みが、わかる人だと、私は思う。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(藍沢)
服を着替えて戻った医局には、自分の椅子に背を預けて、目を閉じているAがいた。
机の上には、ミネラルウォーターとスマホと目薬。
「風邪ひくぞ…」
「……お母さんみたいなこと言わないでよ」
てっきり寝ていると思っていたので、返答があったことに多少なりとも戸惑いつつ彼女を見る。
薄茶の瞳には、穏やかな光が宿っていた。
ソファの上に放置されていたタオルケットを手渡してやる。
「あ…りがと」
室内は、どこか鼻につく匂いがしていた。
Aの淹れるコーヒーとは、また別の匂いだ。
その元を辿れば、藤川の席に置かれたトマトにたどり着く。
箱に綺麗に詰められていたそれは、残りが3つになっていた。
そのとき、ドアが開いて橘先生が戻ってきた。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「お疲れ様です、コーヒー淹れましょうか？」
「あぁすまん、頼む。
…なんか青臭いな」
タオルケットを肩にかけたまま立ち上がったAは、やっぱりという顔で机の上のトマトを見ながら、コーヒーを淹れに医局の奥へ消えていく。
「…多分これが」
「トマト…藤川か」
「朝から頑張って探したんだって言ってました」
奥からAの声がして、橘先生はひとつ頷いた。
「藤川はどうしてる」
「…悩んでます。
冴島になんて言ってやったらいいか分からないって…」
「そうか…。
そうだろうなぁ」
彼はスーツのジャケットを脱ぎながら言葉を続ける。
「どんなに大切な人でも、夫婦は所詮他人だ。
相手の悲しみの深さまでは分からないよ」
ちょうど腰を下ろしたタイミングで、Aが戻ってくる。
一度タオルケットを椅子の背もたれへ置いて、彼女は橘先生のデスクにそっとマグを置いた。
「お待たせしました」
「おぅ、サンキューな」
コーヒーに口をつけながら、橘先生は苦々しく呟いた。
「一番知りたいことなのになぁ…」
照明の下で、残ったトマトが赤々と輝いていた。
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (
レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です！ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！表現が私の好きな表現で一気読みでした！映画も書かれますか？楽しみに待ってます！ (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´｡ｐωｑ｡｀) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月15日 0時
