Bitter chocolate. -溶けて、溺れて- ページ2
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(香坂)
恋は、食べられるとしたらチョコレートのような味がするのではないだろうか。
からん。
久しぶりに開けたボウモアの入ったグラスが、私も飲んで、と急かすように氷を溶かした。
ご褒美に買ったチョコレートは、甘くないビターチョコレート。
────実はこう見えて甘党ではないんだよね、食べれるけど。
コーヒーもブラックで飲むのが好きだし、甘ったるいマカロンやホワイトチョコレートよりかは、甘さを抑えたタルトやブラックチョコレートのほうが好きだったりする。
────昔は好きだったんだけどね…。
LAにいる間に、すっかり薄味が恋しくなって、いまでは和食が大好きになってしまった。
お酒だってこうやってたまに煽るくらいで、浴びるようには飲んだりしない。
────こいつのこともあるし…。
とん、と胸のあたりをひとつ叩く。
手術をすれば治るのはわかっている。
手術をしないと、状況が悪化するのもわかっている。
けれど。
いま手術を受けたら、少なからず救命に穴が開く。
それは、できればやりたくない。
自分の身体のことは、重々理解している…つもりだ。
────せめて、薬であと半年。
この爆弾を止めてくれ。
それからは、手術だって何だって受けるから。
────怒られる、なぁ。
つい先日、連絡を取ったひとのように。
────お前な…。
なんでそんなこと黙ってたんや、このど阿呆!
ひとつ、ビターチョコレートを口に運ぶ。
ゆっくりと溶けていくそれのように、私の心も楽になってくれればいいのに。
痛みも、愛も、溶けて溺れるほどに恋がしたい。
ご縁のないものだったから。
「………結婚、ねぇ…」
はるちゃんと藤川先生の幸せそうな顔を見たら、私もこんなふうになりたいとは思うけれど。
────いつ飛ばされるか、分かんないもんなぁ。
チョコレートの後味が残る中に、ボウモアをひと口流し込んで、ひとつ息をつく。
────きっと、いつからとか、そんなんじゃなくて。
お互い自然に惹かれて、かけがえのない相棒になっていたんだろう。
だからこそ、いまの関係を大切にしたいと思う。
それは、あいつも同じだったみたいで。
────でもさぁ、いきなり恋人なんて。
「………無理だわぁ」
しばし考えた挙句、ホテルの一室でむなしく、私の声が消えた。
A person near you.1 -寄り添う人-→←Your & review. -復習-
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です!ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!表現が私の好きな表現で一気読みでした!映画も書かれますか?楽しみに待ってます! (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´。pωq。`) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月15日 0時