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(藍沢)
「田原健太郎くん8歳。
脈拍120、血圧────」
ストレッチャーに乗った患者を運んだ初療室では、Aが橘先生の優輔くんへの内視鏡検査につき合っていた。
彼女のことだ、こちらの患者の容態を報告する雪村の声も、もちろんきちんと耳に入っているのだろう。
俺の視線に気づいたのか、ふっとこちらを振り返った彼女と視線がかち合う。
────そっち、入れるよ。
────頼む。
彼女の無言の頷きに、確かな意思の強さを秘める瞳がきらりと輝いた。
────医者は突然、窮地に立たされる。
あらゆる事態にそなえて準備していたとしても。
────現実は予測を上回る。
「移します、1.2.3」
そして、医者は大抵負けず嫌いだ。
────予測を上回る現実にさえ、勝ちたいと思う。
だから手を動かし、考え続ける。
────きっと、何か方法はある。
「出血は、それほど酷くないですね」
「あぁ。
ファイバーだけで止血できそうだ」
「…優輔くん、頑張ったね」
香坂と橘先生のやり取りを皆が横目に気にしつつ、田原くんの処置を続けていた。
「────こっちも助けないとな」
「血管造影ですね」
藤川の言葉に名取が答える。
判断ができているなら、彼に任せたほうがいいな。
「優輔の処置が終わり次第、そっちに香坂を送る、それまでもつか」
「…血管次第では、緊急オペになります。
オペになれば、彼女の力は不可欠です」
俺の言葉に、皆が頷く。
優輔くんのそばについていたAが、皆の顔を見渡しながら言い切った。
「救いましょう。
────無駄にしていい命なんて、ありません」
「あの子が言ってくれると、救える気がするから不思議だよね」
「うん」
緋山と白石が小さく笑う。
長いつきあいだが、彼女の言葉は、患者も医者も勇気づける魔法の言葉だと思う。
俺たちを見送るAにわずかに口角を上げて、血管造影のため、一度初療室をあとにした。
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Koto(プロフ) - リクエストなんですが、shortstoryで三井先生が香坂先生を溺愛するお話が見てみたいです！ (2017年9月23日 11時) (
レス) id: e1c8bdc482 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 藍沢とくっつけてほしいです！ (2017年9月1日 5時) (レス) id: 4dd38bd3ac (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます。リクエスト了解しました、短編で書かせていただきますね(*^_^*) (2017年8月24日 13時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - ずっと楽しく読ませてもらってます！伏線の張り方とか心情描写まで丁寧で引き込まれます。しかもネタもつきないしすごいですね！！リクエストなんですが、京先生が大阪の病院でモテて、白石先生がそれにちょっと嫉妬する？みたいなものが見たいです！ (2017年8月23日 23時) (レス) id: c0afa0c28c (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - 前作時にはコメ返ありがとうございました！4話読みました。歩那ちゃんの存在が気になります。香坂先生にとって良い刺激といいますか、そうなってくれるのが楽しみです！又短編立浪草のお話も読みました。一週間でも幸せだったのだろうと思うと凄く切なくて泣けました。 (2017年8月15日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月8日 10時
