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次の日、いつもどおり朝起きて、いつもどおり出勤した私は、毎朝の日課である医局でコーヒーの香りに包まれていた。
ちなみに、今日は朝から循環器内科のほうで手術に入ってくれとのご要望が井上先生直々にあったので、それに備えて甘めのカフェ・オ・レを作った。
この1杯を堪能してから、スクラブに着替えに行く。
それが、私のLAからの日課だ。
マグカップを置いてひと息ついたところに、医局のドアが開く音がする。
既にユニフォーム姿の名取くんが、入口で呆然とこちらを見つめている。
私の顔に、なんかついとるかい?
「おはよう。
当直明け、お疲れ様」
「あ……おはようございます。
私服で一瞬誰かわかんなくて」
あ、そっか、フェローたちは私の私服、見たことないよね。
今日はバイクじゃなくて歩きで来たから、ゆったりとした服だ。
鎖骨のあたりまで襟元が落ちた、ネイビーの地に細い白のストライプが入ったトップスは、袖や裾にゆるくフリルがあしらわれていて、ちょっとお気に入り。
ボトムスはベージュのワイドパンツ、パンプスはトップスに合わせて、ネイビーブルーを履いた。
胸元には、すっかり馴染んだニトロペンダントと、ピンクゴールドのリングが揺れている。
首元は、できれば今日はあまり晒したくないんだよねぇ…まあスクラブに着替えたら出るからしょうがないんだけど。
「あ、ちょっとフライトの記録用紙で、書き方分からないところがあるんですけど…いいですか?」
「ん、どこどこ?」
マグを持ったまま彼の席に近寄ると、机の上にはバインダーに閉じられたままのフライトの記録用紙。
「ここ、なんですけど…」
指さされた部分を覗き込んだときに落ちてくる髪を耳にかけながら、私はあぁ、と頷いた。
「ここはね…────」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(名取)
ドアを開くと、医局はコーヒーの香りに包まれていた。
そこにいたのは、一人の小柄な女性。
声を聞くまで、一瞬、本当に誰だか分からなかった。
────髪、下ろすと大人っぽくなるんだ。
普段、休憩中に白石先生や緋山先生と一緒に笑う無邪気な香坂先生とは、また違った一面だった。
黙っていれば、その長い睫毛に縁取られた薄茶の瞳は儚く、どこか憂いを帯びた表情を魅せる。
でも笑うと本当に子どものようで、その笑顔に救われる患者さんは多いのだと緋山先生が言っていた。
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Koto(プロフ) - リクエストなんですが、shortstoryで三井先生が香坂先生を溺愛するお話が見てみたいです! (2017年9月23日 11時) (レス) id: e1c8bdc482 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 藍沢とくっつけてほしいです! (2017年9月1日 5時) (レス) id: 4dd38bd3ac (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます。リクエスト了解しました、短編で書かせていただきますね(*^_^*) (2017年8月24日 13時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - ずっと楽しく読ませてもらってます!伏線の張り方とか心情描写まで丁寧で引き込まれます。しかもネタもつきないしすごいですね!!リクエストなんですが、京先生が大阪の病院でモテて、白石先生がそれにちょっと嫉妬する?みたいなものが見たいです! (2017年8月23日 23時) (レス) id: c0afa0c28c (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - 前作時にはコメ返ありがとうございました!4話読みました。歩那ちゃんの存在が気になります。香坂先生にとって良い刺激といいますか、そうなってくれるのが楽しみです!又短編立浪草のお話も読みました。一週間でも幸せだったのだろうと思うと凄く切なくて泣けました。 (2017年8月15日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月8日 10時