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(藍沢)
Aのあとをついていけば、最上階の花火が見える方向の窓を少し開けて、頬杖をついて外を眺めていた。
その横に、窓を背にするような形でもたれる。
どんっと音がして視線を外に走らせると、きらきらと夜空に鮮やかな花火が輝いて見えた。
「たーまやー」
「晴れてよかったな」
「うん」
Aの声に小さく笑えば、彼女もくすくすと笑って、こういう時間は本当に久しぶりだと思う。
────お互い、ゆっくり話す時間なんてなかったからな…。
途端に強く吹きつけた夜風に、Aの薄茶の髪がさらさらとはためく。
本人は鬱陶しそうにそれを抑えて、しかめっ面でぼそりと呟いた。
「…切ろっかな」
確かに会わないうちの7年で、フェロー時代肩の上で揺れていた髪はいまや腰に届くか届かないかのあたりで揺れている。
量はさほど多くないので、見ていてまったく鬱陶しくないのだが、この長さを切るのはいささかもったいなくも感じた。
「…勿体ないな」
「あー、友だちにもそう言われる」
そう言って苦笑を浮かべた彼女の髪に、梳くように指を絡める。
俺が言いたいのは────。
「────俺は、いまの方が好きだ」
「え…？」
さぁと、ゆるい風が通り抜ける。
俺の指に絡まっていた髪は、あっという間に手を離れていく。
髪と同じ薄茶の瞳をぱしぱしと瞬かせたAは、ふいと顔を背けた。
何か、怒らせるようなことを言ったか？
頬に手をのばそうとして、やさしくその手を掴まれる。
そして、軽く押し返された。
「……なにそれ、ちょっとずるい」
────そんなこと言われたら、切るに切れないじゃん。
髪の隙間から覗いた彼女の頬は、赤みが差していた。
その表情に、無性に胸が締めつけられる。
────…参ったな。
自分の気持ちに、蓋をしたと思っていた。
けれど、それは間違いで。
そんな表情を見たら、心臓は簡単に彼女への思いを刻み出す。
一度あふれ出した思いは、留まることを知らずに流れ続ける。
思い思われ、悲しいほどにすれ違って。
それでも思い続けた先に、あるものは。
「────A」
「…リング」
────リング…あぁ、お守りのことか。
ユニフォームの下でいまも揺れているそれを、チェーンを引っ張って上に出す。
「…ここに」
次にこちらを向いた彼女は、いつもどおりの顔だった。
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Koto(プロフ) - リクエストなんですが、shortstoryで三井先生が香坂先生を溺愛するお話が見てみたいです！ (2017年9月23日 11時) (
レス) id: e1c8bdc482 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 藍沢とくっつけてほしいです！ (2017年9月1日 5時) (レス) id: 4dd38bd3ac (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます。リクエスト了解しました、短編で書かせていただきますね(*^_^*) (2017年8月24日 13時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - ずっと楽しく読ませてもらってます！伏線の張り方とか心情描写まで丁寧で引き込まれます。しかもネタもつきないしすごいですね！！リクエストなんですが、京先生が大阪の病院でモテて、白石先生がそれにちょっと嫉妬する？みたいなものが見たいです！ (2017年8月23日 23時) (レス) id: c0afa0c28c (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - 前作時にはコメ返ありがとうございました！4話読みました。歩那ちゃんの存在が気になります。香坂先生にとって良い刺激といいますか、そうなってくれるのが楽しみです！又短編立浪草のお話も読みました。一週間でも幸せだったのだろうと思うと凄く切なくて泣けました。 (2017年8月15日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月8日 10時
