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そのとき、どこかに埋もれたようなスマホのこもった着信音が聞こえた。



「……んぅ」



同時に、それまで穏やかに寝息を立てていたAが顔をしかめて、その発信源を探してもぞもぞと動き出す。



…あ、起きちゃう。



「あんたね、半年後にトロントとか絶対許さないからね!」

「あー緋山先生、A起きるから抑えて」



この子、無理やり起こされるとめちゃくちゃ寝起き悪いから!



と、藍沢先生が彼女に手をのばして、腕の中にあった着信源のスマホをそっと抜き取った。



「………ぅ、…?」

「いい。

…寝てろ」

「……ん」



まったく覚醒してない寝ぼけ眼のAにそう言い残して、藍沢先生は店の外に出ていく。



って、A、勝手に自分にかかってきた着信任せていいの?



あ、でも任せるってことは二人ともよく知ってる人ってことだから大丈夫なのかな。



「あ、見て…すごい」

「ん?…おぉ」



高く積まれたピスタチオの殻…かな?



そのタワーに、藍沢先生の手先の器用さに、賞賛の拍手を送る。



そのあと、恒夫に渡された薄手のタオルケットをAにかけている緋山先生が、お姉ちゃんに思えた。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(藍沢)

電話の相手は、新海だった。



「…何の用だ」

『うっわびっくりした、なんで香坂のスマホにお前が出るんだよ』

「いま寝てるから、代わりに取っただけだ」



驚いている様子の彼にため息をつきながら、中で相変わらず寝息を立てているだろうあいつを思う。



『ん、まぁお前にもどの道言うつもりだったから、手間が省けた。

いまから話す内容、香坂にも伝えてくれ』



それは、天野さんが一過性の痙攣発作で先ほどの入院したという報せだった。



『お前らと話したがってるよ。

一番はA先生がいいけどってな。

…まだ手術に同意してない。

────頼む藍沢、お前と香坂しかいない。

もう時間が無い』

「…明日、あいつと行って話してみる」



タイムリミットが、命の期限が、迫っている。



それを救えるのは、きっと彼女の言葉なのだろうと。



どこかで、願っている自分がいた────。

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作品ジャンル:恋愛
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Koto(プロフ) - リクエストなんですが、shortstoryで三井先生が香坂先生を溺愛するお話が見てみたいです! (2017年9月23日 11時) (レス) id: e1c8bdc482 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 藍沢とくっつけてほしいです! (2017年9月1日 5時) (レス) id: 4dd38bd3ac (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます。リクエスト了解しました、短編で書かせていただきますね(*^_^*) (2017年8月24日 13時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - ずっと楽しく読ませてもらってます!伏線の張り方とか心情描写まで丁寧で引き込まれます。しかもネタもつきないしすごいですね!!リクエストなんですが、京先生が大阪の病院でモテて、白石先生がそれにちょっと嫉妬する?みたいなものが見たいです! (2017年8月23日 23時) (レス) id: c0afa0c28c (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - 前作時にはコメ返ありがとうございました!4話読みました。歩那ちゃんの存在が気になります。香坂先生にとって良い刺激といいますか、そうなってくれるのが楽しみです!又短編立浪草のお話も読みました。一週間でも幸せだったのだろうと思うと凄く切なくて泣けました。 (2017年8月15日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月8日 10時

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